フジワラヒロタツの現場検証(63)

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夏休み
 またいつもの暑い夏がやってきました.と,いっても終戦記念日の話ではありません.夏休みの話です.

 この時期になると,お盆休みで田舎への民族大移動が必ず行われます.筆者もご多分に漏れず,この時期は帰省しているわけですが,どうもエンジニアという職業には「休み」という属性が抹消されてしまっているようで,休み明けに納品というスケジュールが当たり前のように組まれてしまったりします.お盆のさまざまな私的行事と仕事とで,かえって忙しくなる方も多いのではないでしょうか.

 この時期は,会社の夏休みスケジュールを眺めつつ,なかばあきらめながら愚痴をこぼしあう光景が,筆者の会社ではそこかしこで見られます(え? そんなことはないって? そうならばあなたは,筆者に仕事を出している会社の方かもしれませんね).

 そうはいいながらも,会社が休みになると,(思いっきり悲惨なスケジュールでない限り――いや,しばしばそうなることがあるのは重々承知してはおりますが)そこそこのんびりした気持ちで出社することができます.なにより,朝定時に出なければという心理的重圧から逃れることができると,不思議といつもより早起きできたりするものです.

 ですから最初の悲嘆をすませ,状況を受け入れてしまえば,結構みんな,さばさばといつもより心持ちのんきな雰囲気で(あくまで,心持ち,ですよ)仕事をいたしております.

 人は過酷な運命を突きつけられたとき,怒りと絶望を感じ,その時期をすぎると,それを甘んじて受け入れる,というわけでしょうか.これは悲惨な仕事のときほどいえることですね.

 実家に帰って,線香の香りなど嗅ぎながらデバッグしていると,いっそなにか悟りでもひらけるのではないかという妄念すらわいてきます.

 人間たまには仕事のことも,職場の人たちの顔も忘れ,家族や故郷の人と過ごすのもいいかもしれません.テクノストレスでいうところの「過剰適応」気味の方が多いでしょうから,少し人間界に身を戻すことが大事です.なにしろ,我々に仕事をくれるのは,そういった人間界にどっぷり浸った人たちだったりしますから,そういった人たちの気持ちを理解し直すトレーニングは非常に重要ですね.

 そういったわけで仕事を離れて,違う時間の流れに身を置くことで,自分自身を賦活してみることも必要なのではないでしょうか.まあ,お守りにノートパソコンをもっていくくらいはとがめませんので.

 そんなわけで,このコラムで,技術のことはちと忘れて,のんびりと過ごすことをおすすめしたという次第です.かく申す筆者もゆったりとリゾートを楽しむつもりです.えーと,2日ほどですけれどね.

藤原弘達 (株)JFP デバイスドライバエンジニア,漫画家

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