フラッシュ書き込みツールFDTの裏?ワザ
2011年5月号付属RX62Nマイコン基板補足情報 2011年4月 7日
シリアル接続HEWモニタを使ってHEW上から実機デバッグしているとき、CPU内蔵フラッシュROMにはモニタ・プログラムしか書き込まれていません。プログラム・サイズの大きなUSB版を使っていたとしても約20Kバイトです。内蔵フラッシュROMは384Kバイトもあるので、350Kバイト以上が未使用となっているわけです。
そこで空いている領域を、何らかのデータ領域として活用しましょう。そのためには、シリアル接続HEWモニタとデータを、いっしょにフラッシュROMに書き込む必要があります。実はフラッシュ書き込みツールFDTでは、複数のmotファイルを書き込む方法があります。
本誌5月号第6章では、FDTを起動するときに“Basic”のほうを起動しています。しかしBasicでは、第6章の図20にあるように、motファイルを一つしか指定できません。そこで、“Basic”の付かないほうのFDTを起動します。
起動後の各種設定は、5月号第6章にある説明と同じ項目が出てきます。設定が終わると、次のような画面が開くので、プロジェクト名のところで右クリックし「ファイルの追加」を選択します。
図1 ファイルの追加を選択
SCI版またはUSB版のシリアル接続HEWモニタのmotファイルと、いっしょに書き込むデータをモトローラS形式に変換したmotファイルを指定します。もちろんシリアル接続HEWモニタとは重ならないアドレスに配置するようにmotファイルを作成してください。アドレスが重ならなければ、三つ以上のファイルでもかまいません。
下記の例では、USB版シリアル接続HEWモニタと、LCD表示に文字を表示するためのフォント・データを選択した例です。
図2 USB版シリアル接続HEWモニタとフォント・データを選択
実際の書き込みでは、下図のようにmotファイル名のところで右クリックし、「ファイルのダウンロード」を実行します。この操作を書き込むmotファイルの数だけ繰り返します。
図3 内蔵フラッシュROMへの書き込み開始
RX62Nの内蔵RAMは64Kバイトなので、フォント・データのようなサイズの大きなデータはRAMに入りきらずダウンロードできません。このようなデータはここで説明する方法で、内蔵フラッシュROMのモニタ未使用領域に格納しておくと便利です。
またHEW評価版では初回ビルド時から60日を経過すると、ビルド・サイズが128Kバイトに制限されます。128Kバイトの制限を回避する方法としても、データ・テーブルなどをプログラムから切り離し、単独のデータ・ファイルとして書き込んでおけば、それをアクセスするプログラム自体のサイズを小さくすることができます。
なお、FDTを使ってフラッシュROMを書き換える場合、セキュリティ上の関係から、FDTとRX62Nマイコンの接続が確立されたタイミングで、内蔵フラッシュROMの内容が消去されます。よって、シリアル接続HEWモニタはそのままで、データ・テーブルのみ書き換えたい場合でも、再度シリアル接続HEWモニタも書き込んでください。