USI(環隆電気)
http://www.usi.com.tw/
前から,台湾中部にIBMのメインボードなどを製造している会社があることは知っていました.しかし,台湾中部は台北からの交通の便が悪く,誰かしらの案内なしに気軽には移動できません.以前にも紹介した,友人のアンブローズは台中の出身で,機会があればメーカーと連絡を取って欲しいと頼んでいました.
そうこうするうちに,台湾中部地震が発生し,話が止まっていたのでした.今回,アンブローズからの電話で「台湾中部にある工場を見学する約束をすることができた」ということで,早速,彼の運転する車で台中へ取材に出かけました.
台北からおよそ200km南へと進むうちに,景色も台北とは異なり,山の感じも,植生が異なるからなのか,変化しています.目的の会社は,南投縣草屯鎮にあるUSI(環隆電気)という会社です.
大きな工場がいくつかと,社員専用駐車場が,草屯の田園に調和して,新竹の工業区や台北・桃園エリアの工場とは,全く趣を異にしています.広い敷地に余裕のある建物であるためか,忙しいのだけれど,せっかちでない,というのが最初の印象です.
USI社に到着し,最初にお会いしたのが高級顧問の木村さんです.木村さんは,日本の関西にある大手企業の工場長を長く勤め,定年後にUSIに入社したとのことです.木村さんは,草屯出身で,子供のころ日本に戻ったのだそうです.木村さんの主義は,「最高品質を最低価格で提供する.少数多品種に挑戦する」というもので,日本企業からのODM/OEM注文も多いです.
同社は1976年の設立で,従業員数は3,450人です.ISO9002,ISO9001,ISO14001の認定を受けています.建物に入ると,USIの製品群が展示されています.最初に目に付くのが,IBM最優秀パートナのトロフィーです.IBMのOEMが多いのですか,と尋ねると,IBMが設計した製品の製造をUSIが引き受けるODMの形態が多い,とのことです.
従来あるIBMデスクトップマシンの多くのメインボードはUSI製で,1998年秋の日本および中国向けAptivaは,すべてUSI社の手によるものだそうです.中国向けのAptivaは台湾の工場で梱包まで行い,日本向けはすべての部品を台湾から送り,日本のUSI関連企業で製品化しているとのことです.Aptivaを作っている工場を見学しましたが,メインボードだけではなく,筐体にメインボードを組み込み,動作テストを行い,マニュアルや付属品などのパッケージ化を行っているところを見たのは初めてでした.その他,メインボードの工場も見学しました.
その他,ノートマシンやファックス,10mの高さから落としても壊れないWindows
CEマシンなど,これはここで作っていたのか,とびっくりします.ただ,OEMやODMということで,これらについて詳しく紹介できないのが残念です.
R&D部門では,通常の検査測定器だけではなく,EMI(不要輻射電波)を測定する電波暗室もあるし,メインボードメーカーでは一般的に必要ない,ミクロンレベルで測定できる3次元測定器なども設置されています.R&Dスタッフだけでも583人おり,日本語を操ることのできるスタッフが,木村さん以外にも多くいます.
工場で作業するスタッフは,近くの工業学校と提携して学費奨学金制度もあり,すべて現地で雇っています(唯一の外国人が木村さん).この方法だと,卒業までの3年間は退職する人が非常に少ないそうです.
記念写真を撮影しましたが,結局写真中の全員が日本語を話します.さらに,社内で比較的普通に台湾語会話が聞かれるのも,台湾中部を連想します.
今後は,USIブランドで製品を販売する予定もあるようで,SiS630やVIA694X,Intel810/820搭載のメインボードをリリースするそうです.IBMのベストパートナということで,使用しているパーツなども,信頼性の高いものばかりですし,注文する側も,この工場なら安心という印象を持てる企業です(写真5).