BeOS搭載パソコン
倉光 君郎
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1998年12月,BeOS for Intel R4Jがリリースされました.それとほぼ同時に日立製作所から,BeOSプレインストールマシン(FLORA Pirius330J)が発売になりました.今回は,早速,Purius330Jを使って,BeOSの世界を紹介したいと思います.
BeOS の名前はご存知でしょうか?
BeOSは,ジャン=ルイ・ガセー氏らAppleの開発スタッフが独立して作ったBe.
Incが提供する最新のオペレーティングシステムです.
● BeOSとは,どのようなOSでしょう?
Be.Inc社が設立された1990年頃は,Macintosh全盛期の時代です.PCユーザーは,DOS/Vユーザーなんて呼ばれ,カッコイイGUIインターフェースを持ったMacを羨ましい思いをしながら,DOSやWindows3.1を使っていた頃です.BeOSの特徴を理解する鍵は,絶頂期のAppleをスピンアウトしても,新しく開発したくなるコンセプトやデザインがあったという点でしょう.
新しいOSを作る理由は,いろいろ考えられます.特に,1990年頃の個人向けのOSは,MacOSもWindows3.1も含め,擬似マルチタスクだったり,ちゃんとシステム領域を保護できなかったり,16ビット時代のメモリ制限を引きずっていたりと,全くひどいデザインでした.これは当時からみんな気づいていたことですが,既存のOSベンダーは,可能な限り過去のアプリケーション資産を大切にしたいので,どうしても思い切った再設計ができません.それが足かせになって,パーソナルコンピューティングが大きく制限されていました(ちなみに,現在でも多くのOSが古いデザインの足かせに苦しんでいます).
Appleの開発副社長だったジャン=ルイ・ガセー氏は,「それなら,新しいOSをゼロから作ってしまえ!」
と思ったのでしょう.特に,Macが得意だったマルチメディア機能を制限なく本格的に利用できるOSを目指したようです.
そんな,マルチメディア指向の最新の「メディアOS」が,BeOSです.
BeOSの先進機能
BeOSは,1990年代主流になったOSのトレンドを初期デザインの段階から採用してきました.古いアーキテクチャを残した継ぎ接ぎしながら進化してきたOSに比べると,シンプルでハイパフォーマンスな実装になっています.
● マルチプロセッサとマルチスレッド
BeOSの最も有名な特徴は,シンメトリック(対称)マルチプロセッサへの対応でしょう.サーバー用途のWindowsNTやSolaris,LinuxなどのOSでもマルチプロセッサ対応が増えていますが,既存のアーキテクチャへの配慮をしているためか,なかなか期待通りのパフォーマンスが出ないようです.BeOSは,マルチプロセッサで高いパフォーマンスを追求するために初めから,高精度なマルチスレッド機構もサポートしています.そのため,最もマルチプロセッサマシンの能力を引き出すことのできるOSのひとつだと言われています.
● 64ビット・ファイルシステム
多くのOSがサポートしている32ビット・ファイルシステムでは,簡単に計算しても4GBバイトのファイルが上限になります.通常は,これで十分なのですが,動画などのマルチメディアコンテンツ用には足りません.BeOSは,大容量のストレージやファイルを扱えるように,一足早く64ビット・ファイルシステムを採用しています.
● マルチスレッド・グラフィックシステム
BeOSは,高速な2D,3D描画を実現するマルチスレッド・グラフィックシステムをサポートしています.また,3D描画に関しては
OpenGLグラフィックライブラリを標準サポートしています.
BeOSは,サーバー用途のハイエンドOSがすすんでサポートしてきた諸機能を備えていることになります.しかも,これらの先進機能をマルチユーザー用のサーバー機能のためでなく,あくまでもシングルユーザー用のデスクトップOSとして,デジタルコンテンツの編集などの用途のための最適化されているのです.BeOSは,ちょっと贅沢なOSと言えます.
BeOS for Intel R4Jまでの道のり
BeOS の著作権表示を見ると,年度が1990-1998になっています.意外と歴史があることに驚きます.ここで,BeOSの歴史を振り返っておきましょう.
もともと,BeOSは,Be Boxと呼ばれる Be. Incの開発した専用マシン上で利用されていました.このBe
Boxは,PowerPCを二つ載せたアーキテクチャになっており,最初からバリバリのマルチプロセッサOSだったことをうかがい知ることができます.
日本でBeOSの知名度があがったのは,Power Macintoshのアーキテクチャ上に移植されてからです.筆者自身,2年くらい前,
Macユーザーの先輩が,アメリカのMac系雑誌のCD-ROMに添付されていたBeOSを試していたのを羨ましく見ていました.この頃から,新しもの好きなユーザーの間で,BeOSはブームになりつつありました.
BeOSのマルチメディアOSとしての評判が高まると,本家(?) Appleの次世代Mac
OSに採用しようという動きもあったようです(結局,Appleは,NeXTSTEPを採用して,Rhapsodyを発表).
ただし,BeOSは,OSマニアだけなく,産業界からも好意的に受け止められ,可能性のある次世代OSとしての認識も定着しました.
BeOSは,長らく PowerPC系プラットフォームのOSだったので,PCユーザーには無縁の存在でした.しかし,ようやく昨年,待望のインテル移植版(R3)が登場しました.より多くの人が,Be.
Incの目指す次世代コンピューティングを体験できるようになったわけです.
そして,1998年12月,BeOS Release 4Jが発売になりました.今度のリリースは,日本語環境にも対応しており,日本語TrueTypeフォントやエルゴソフト製のかな漢字変換ソフトが付属しています.憧れのBeOSがより身近な存在になってきました.さあ,BeOSを使ってみましょう.
BeOSに関する詳しい資料は,Be. Incのホームページをどうぞ. http://www.be.com/ |
BeOSプレインストールマシン(Prius330J)の魅力
さて,最新のBeOS for Intel R4J(日本語版)をプレインストールしたマシン,
日立 FLORA Prius330Jは,どのようなマシンか見ていきましょう.
マシンスペックは,表1のとおりです.(*)マークが付いているのは,正規の製品仕様に載っているものではありません.今回,編集部が日立さんからお借りしたマシンの搭載を独自に調べたものです.
ちなみに,筆者はここ2年ほど,組み立てPCばかり使ってきました.メーカー製のPCは,コスト削減のためか,ユーザーのわかりにくいところで手を抜く傾向があるので,どうも好きになれませんでした.しかし,今回,Prius330Jを見たところ,特に不満を覚えるところはありません(ちょっと,メモリが少ないかな?).非常にバランスの取れたハードウェア構成だと思います.
● Prius330Jの意義
BeOSをプレインストールする意味はあるのか?
という疑問をお持ちの方もおられるでしょう.確かに,BeOSを使いたいと考える人は,自分でBeOSくらいインストールできるでしょう.BeOSがいくら可能性があるからと言っても,BeOSの対象はまだ一般のエンドユーザーではないので,プレインストール機は時期尚早かもしれません.
しかし,Windows95(98)以外のOSを利用するときは,ハードウェアの対応が最大のネックになります.つまり,いくらインテル版OSとはいえ,周辺機器のデバイスドライバがない場合は,使うことができないのです(実際,LinuxやFreeBSDを使うときは,動作確認で非常に神経を使います).
BeOSは,最新のハードウェアをフルに使うことを前提にしています.実際,LinuxやFreeBSDのように,第一線を退いたマシンを使えば大抵動作するだろう,というのとは異なります.そんな場合,Prius330Jのように,メーカーが動作確認したハードウェアだけで構成されているのは,非常に安心感があります.Prius330Jは,「ハードウェアの動作確認」というハードルをなくすことで,より多くの潜在的なBeOSユーザーを開拓できるかもしれません(もちろん,Windows98も搭載しているので,ハイスペックなパソコンとしても使うことができます).
Prius330Jに関する詳しい資料は,FLORACITYのホームページをどうぞ. http://floracity.hitachi.co.jp/go/be/index.htm |
BeOSを使ってみよう
Prius330Jは,6.4GBのハードディスクのうち,約2GBをWindows98,残り4.4GBをBeOS用に割り当てています.
● BeOSの起動
Prius330Jは,いわゆるMBR領域にブートマネージャがインストールされていません.そのため,電源を投入すると,自然にWindows98が立ち上がります.
BeOSを起動するためには,次のどちらかの操作が必要になります.
◆ 付属の起動用フロッピディスクを利用する.
◆ Windows98上のBeOS Launch を利用する(図1: 注:
このラウンチャは,マニュアルに従ってユーザーがインストールしなければなりません).
どちらにしても,BeOSの起動に関して,使い勝手がいいとはいえません.何かしらのブートマネージャを導入して,直接BeOSを起動できるようにして欲しかったところです.
以下略
copyright 1999 倉光 君郎