第2章
Celeronの実力
人気は高まるがコストパフォーマンスは良いのか

 Intel社の主力CPUとしてはPentiumUがあり現在最高峰の450MHzの製品があります.一方低価格パソコン用としてプロダクツされたCeleronは,333MHzまでです.普通のユーザーから見れば圧倒的にPentiumUの方が性能が良さそうに見えますが,それを差し置いてCeleronが脚光を浴びています.
 1998年4月15日に発表されて以来,人気を博したIntelのCeleron CPUですが,去る8月25日に追加バージョンとして300A/333MHz版が登場しました.このCeleronは旧来のMMX-Pentiumの後継製品として1000ドルパソコンなどの低価格パソコン用向けCPUという位置づけにあるのですが,マニアや自作派ユーザーを中心として大きく注目を浴びています.  なぜそのように人気があるのかというと,Celeronは,ずばり低価格であり耐クロックアップ性能が高いからでしょう.
 ここでは,その能力について,いろいろな角度から観察してみます.

 PentiumUとCeleronを比べるとやはりPentiumUのほうが性能が良いのは当然です.
CeleronはPentiumUにあった512KBの2次キャッシュをなくし,CPU形状も簡易なヒートシンクと冷却ファンのみという構造になっています.追加で投入された300A/333MHz版こそ128KBの2次キャッシュを搭載しましたが,それでも容量的には見劣りします.
 しかし,ここでもう一度良く考察してみましょう.本当にPentiumUとCeleronの性能的絶対差があるのでしょうか.もしCeleronがPentiumUと対等の性能であれば,Celeronは非常にコストパフォーマンスの良いCPUということになります(表1).

 
Celeronの位置づけ

 冒頭でも述べましたがCeleronは,低価格パソコン用のCPUとしてIntelが送り出した戦略商品です.価格下落が著しいパソコン市場において,その販売価格の最も比率の高いパーツはCPUですが,PentiumUでは,低価格パソコンに使用するには未だ難しい面があります.そこでCPU単価を引き下げるためにIntelがとった方法は,PentiumUと同じSLOT1を使用しながら2次キャッシュを除き外装をなくしたCeleronでした.
 Celeronの実物を見ると確かにコストがかからないだろうと思えます.初めてPentiumUのCPUを持った時には,これがパソコン用のCPUかと思えるほどの大きさと質量を感じましたが,Celeronは非常に軽く意外にコンパクトになっているので同じSLOT1用のCPUとは思えない仕上がりになっています.
 その外観から何となくCPUの性能も懸念されますが,性能の程はこれからの節で述べるとして,Celeronの思い切った仕様には驚かされます.こうした大胆な手法が功を奏しCeleronは同じ動作クロックのPentiumUに比べて,価格は半額ほどになっており,300MHzクラスのCPUが普及期にさしかかったとはいえ非常に安価になりました.こうした価格の問題が解消されたことにもより,SLOT1系のパソコンもかつてほど手の出しにくい製品でなく,今後広範囲に普及することが見込まれます.
 今後,動作クロックを向上した製品が投入されるでしょうから,Celeronのラインナップも豊富になるので,ユーザーとしてはCeleronの動向から目が離せないでしょう.

● キャッシュの比重は大きいのか

 ここで皆さんはひとつ疑問が湧かないでしょうか.Celeronは単純にいうとPentiumUから2次キャッシュを取り外したもののはずなのに,512KBほどのメモリがそれほど価格に影響するのでしょうか.真の答えはIntelのみしかわかりませんが,推測してみましょう.
 現在のPentiumUは400MHzを超える動作クロックを達成しています.2次キャッシュはCPUの半分の動作クロックでアクセスされるので,400MHzのPentiumUでは200MHzで駆動される2次キャッシュを内蔵していることになります.2次キャッシュには安価なDRAMなどとは違うBSRAMという高速なメモリが使用されていますが,200MHzで動作するとなるとアクセス速度は,1/200MHz=5nsと現在の高速LSIでも限界に近い速度が要求されるわけです.高速なLSIが高価なのは当然ですから,このようなメモリを搭載すればCPUも必然的に高価になるわけでしょう.
 また,私たち一般消費者はおそらく扱う機会はないでしょうが,P6シリーズの最高峰のサーバー/ワークステーション用XeonはCPUコアこそPentiumU相当のものですが,CPUコアと同期してアクセスされる2次キャッシュを内蔵するために,同クロックのPentiumUの3倍以上の価格が設定されています(写真1).Xeonは2次キャッシュのほかにCPUを保護するための温度センサや様々な機構が追加されていますが,それでも価格の比重を占めているのは2次キャッシュでしょう.
 Xeonでは2次キャッシュにIntelが最先端の0.25ミクロンプロセスで製造した,専用の2次キャッシュを用いているためにCPUと同速度のアクセスが可能になっています.Xeonの2次キャッシュは,CPUと同クロックでアクセスされるので1/400MHz=2.5nsと,私たちの扱うパソコンに使用されるパーツとはもうかけ離れた動作速度となっています.このようなメモリを搭載しているのでXeonは非常に高価なのでしょう.

2次キャッシュは本当に有効か?

 現在PentiumUとCeleronを搭載しているパソコンを使用しているユーザーはほとんどがWindows95/98を使用していると思われます.しかし,このWindows 9xというOSは拡張に拡張を重ねた結果,OS単体のみでWindows95では28MB,Windows98にいたっては48MB以上の物理メモリが必要とされ,このOS上でオフィス製品やインターネットエクスプローラなどの各アプリケーションを動作させると,さらに数十MBのメモリが必要なほどの巨大なシステムとなっています.
 さて,PentiumUには512KBの2次キャッシュメモリが搭載されていますが,果たしてこの2次キャッシュはWindows9xというOS上では本当に有効に働いているでしょうか.もう説明の必要もないでしょうが,現在肥大化したWindows9xというOSは,512KBという一見大容量に思えるキャッシュサイズに到底収まらず2次キャッシュは,ほとんど有効に機能していません.加えて2次キャッシュは現在のパソコンハードウェア構成により,有効にならない理由がひとつあります.

● バスマスタが…

 すべてのパソコンにはほとんどPCIインターフェースが組み込まれていますが,例えばPCIボードのバスマスタ転送によるメモリ書き込みが行われると,2次キャッシュはその内


以下略.copyright 1999年 野葉光一