第2章

BeOSインストールマシンの製作

もちろんデュアルCPUマシンを作る

 

下田 和正

 1999年2月始め秋葉原では,Celeron CPUのデュアル化が話題になっているためか,PentiumUデュアルCPU用マザーボードが品薄になったり,低価格デュアルマザーボードが突然店頭に現れたりと,日々在庫状況が変化しています.Linuxも2.2になりマルチCPUへの対応がスレット単位になって効率が上がったと言われています.従来からのWindows NT 4.0を含め,マルチCPUの利用者が増えてきそうです.

 

CPUにはPentiumUを使う


 2CPU以上の構成をとるためには,CPUに内蔵されたマルチCPUのための回路と,対応したチップセットが必要です.486の時代にはマザーボード上に外部回路が必要でしたが,Pentium-90/100MHzが発売されたときに,必要な回路がCPU内に内蔵されたため,マザーボードメーカーは,特別な回路設計なしに,2CPUマシンを製作することができました.
 そのころ手軽にマルチCPUで利用できるOSは,Windows NT 3.51や4.0でした.現在でも,NT 4.0 Workstationは2CPUもしくは4CPUまでサポートされているので,そのマシンパワーとグラフィック回路の高性能化と伴って,出荷台数は飛躍的に伸びています.

 先日のシリコングラフィックス社の発表会では,同社は累計27,000台ワークステーションを出荷してきたが,今後1年間で2万台を出荷するというパラダイムの変化をみずから成し遂げようとしています.発表会のデモはSilicon Graphics 320というマシンでしたが,そのデモは,2年前にOnyxで行ったものと同等だそうです.
 しかし,そのハードウェアはPC/AT互換機ではありません.BIOSはなく,ARC仕様となっています.つまり,同社の得意としている足回りをとても高速化することで,CPUとのバランスの取れたマシンを作っています.しかし,この業界,4倍速いと言っていても,それは,1年以内に覆されるスペックです.Intel社と契約をし,CPUのバスのライセンスを受けてたった年間2万台を作っていて,果たしてアドバンテージを保っていけるのでしょうか.それは,このPC/ATの業界が身を持っていつも証明していることです.


 実は,そう言いきってしまうことはできません.それは,OpenGLのベンチマークテストVIEWPERF6.1を実行してみるとわかるのですが,3Dグラフィックの性能は,通常のPC/AT互換機の10倍を超えるスペックをたたき出します.したがって,320が実用的な構成で約100万円ですから,PentiumUの自作機が25万円で動いたとしても,コストパフォーマンスではかなわないのです.しかし,レンダリングなどのCPUパワーを要求する作業は,ほとんど処理能力も変わらないので,ネットワークで,複数のマシンを得意な仕事をさせるようにシステム設計をすることが一番重要といえそうです.
 今,一番コストパフォーマンスの良いデュアルCPUマシンは,Tekram-P6B40D-A5などの低価格マザーボード(約2万円)にCeleron-300A(デュアル)をクロックアップして450MHzで動作させるマシンです(2月中旬).
 グラフィックカードにPermedia2(1024×768 16ビットを)積んだときの結果を示します.すべてのベンチマークが2CPUで動いているわけではありません.もうすぐ出荷が予定されているPermedia3やTNT2を使った結果が楽しみです.

AWadvs-02 Weighted Geometric Mean = 11.89
DRV-05 Weighted Geometric Mean = 4.536
DX-04 Weighted Geometric Mean = 8.436
Light-02 Weighted Geometric Mean = 0.9194
ProCDRS-01 Weighted Geometric Mean = 1.917


 現在,PentiumUを二つ使うマシンはコストパフォーマンス良く製作できます.逆に4CPU用のマザーボードは一般には入手できません.メーカー製でワークステーションと呼ばれるマシンはメモリとI/Oまわりが高速化されていますが,使うCADやグラフィックソフトウェアの能力に適しているグラフィックカードを用意する必要があります.自作の場合は,特定用途のワークステーションほど速いものは作れませんが,CPUの速度が同じであれば,それに近い速度が出せるので,作りがいがあります.
 つまり3Dソフトウェアでは,レンダリング性能はCPUパワーに比例しますから,自作マシンは,メーカー製と同等の性能が出せるのです.ただし,表示能力はグラフィックカードに大きく依存します.

● 代わりにBeOSが使えるじゃないか
 ハードウェアはカリカリにチューンしなくても,そこそこ速いものは,すぐに作ってしまえます.13,800円のOSを使って,そのハードウェアの潜在能力を試してみることができます.もちろん,メジャーなCGアプリケーションが出てこなければ,このOSも×ですが.R5が出荷されてその評価は出てくるでしょう.
 このOSは,最初からマルチCPUに対応しています.つまり,ライブラリもスレッドセーフなものが用意されている,魅力の大きいOSなのです.

ハードウェアに何を用意するのか


● ASUSTeKのデュアルCPU用マザーボード
 いろいろな会社からデュアルCPU用のマザーボードが出荷されています.ここでは,特にたくさん店頭にあるという理由から,ASUSTeKのP2B-Dを購入しました(表1).一番価格は高い部類です(4万円前後).
 BeOS Readyのサポートするチップセットは,

Pentium U (dual)

  
   440FX
   440LX
   440BX
   440GX

となっています.
● SCSIコントローラを使う
 新しいOSをインストールするとき,絶対に安心なディスクコントローラを使いました.この約2年は,IDEタイプのハードディスクを使っても問題はなくなっていますが,容量の問題など,不要な問題を避けるために,アダプテック製AHA-2940UWコントローラを使いました.バルクでも1枚は持っておくべき製品でしょう.
 この製品はどのOSメーカーも必ずサポートするコントローラですから,インストール時の問題を最小限にできます.
 SCSIインターフェースの転送速度の上限は,Fast-10MB/秒,Ultra-20MB/秒,Ultra Wide-40MB/秒と高速になってきました.LVD(Low Voltage Differential)タイプの80MB/秒が実用化されていますが,個人での利用では,まだあまりメリットは多くありません.コストパフォーマンスを度外しするのであれば,もちろん,1万回転のLVDタイプを利用しましょう.
 もちろんハードウェアRAIDコントローラを使いストライピング0で構成すれば,高い転送速度が選られます.しかし,NetWareかWindowsNTでしかサポートされないことが多いので,BeOSで利用できるのを探さなければなりません.本気でビデオ編集をするのであれば,通常のデータ転送レートを40MB/秒程度を確保しなくてはなりません.そのためには,外付けRAIDドライブをRAIDコントローラでストライピングするしかありません.
 今の1万回転の単体ハードディスクでは,10MB/秒台の速度しか確保できません.
● ビデオはG100
 最近の多くのビデオカードがサポートされているので,手持ちのビデオカードがいろいろと試すことができて楽しみです(表2).どのくらいのパフォーマンスが出るのかは,標準的なベンチマークテストが使われるようになってくると,比較ができて楽しみです.
 今回は,価格の安いMatrox製G100を使ってインストールしました.特に何もせず,認識されました.
● ネットワークカード
 サポートの中にNE2000が入っているので,何でも動きそうですが,そこが逆に恐いので,Intel製を使うことにしましたが,最初は,なぜか失敗したのです(表3).
 後で,詳しく説明します.
● オーディオのサポートも多いが
 最近のYAMAHAのチップまでサポートされているため,どれでも音が出そうですが,利用の多いSoundBlaster16,Ensoniqがデフォルトではないため,買い直しが必要な場合もあります(表4).
 ここでは,SoundBlaster AWE64を用いました.
PnPを購入したので,何もせずに音が出てしまいました.

製作手順


● ケースにはこだわった
 1CPUのコンパクトなATXマザーボードの大きさに比べれば,2CPUのマザーボードは少し形状が大きくなっています.ATXフォームファクタで決められているネジの位置などはATXそのものですが,奥行きが長くなっています.P2Bには,いくつかのバリエーションがあり,SCSIコントローラ付き,LANコントローラ付き,その両方が付属したタイプなどがあります.コストパフォーマンス的には,それらをすべて含んだモデルがベストですが,もし,そのどれかがインストールするOSに対応していないときなど,逆に無駄な投資になってしまいます.
 ハードディスクを複数搭載する予定があるのならフルタワーのケースを利用すれば,内部的にも余裕がありますが,ここでは,ハンドリングのしやすさを重視し,ミドルタワーのGTシリーズからパネルがパンチメタルタイプを選びました(写真1).通常のケース2台分の価格ですが,丈夫さが気に入っています.

toku2-zu1.jpg (19237 バイト)

● 最低限のハードウェアで動作テスト
 Pentium Uは266MHzを購入しました(写真2).1999年に入りすでに市場にはありません.0.25ミクロンルールで製造された製品なので,FSB-100MHzの設定が行われているマザーボードにそのまま挿しておきました.
 G100のAGPグラフィックカードをAGPバスに挿し込みます.このバスはピン数が多い割には接触力が弱いような感じがします.コネクタにきっちりと入っていることを確認して,ネジ止めします.
 メモリはS100規格の128MBを2枚使いました(写真3).マザーボードのスロットは4つありますから,クライアントマシンには十分な余裕です.
 ディスプレイをつなぎ,電源を入れると,マザーボード上のスピーカからピッと音が出て,400MHzの二つのCPUを検出したという表示が画面に出ます.問題は何もありませんでした.
● 残りの周辺機器を取り付けてOSをインストール
 サウンドボードのAWE64(Value),LANカードのEtherExpress PRO/100,SCSIコントローラのAHA-2940UW,CD-ROM(IDE接続;HITACHI CDR7730),SCSIハードディスク(DDRS-34560W),フロッピドライブを取り付け,電源を入れました(写真4).
 AWE64のPnPの表示,CD-ROMを探し出し,AHA-2940UWのコピーライトの表示とハードディスクの情報を表示して正しくすべてが動いているようです.
 BeOS Release4Jに付属しているフロッピディスクを入れ,マシンを再起動しました.CD-ROMドライブには,OSの入ったCD-ROMを入れておきます.
 画面の指示どおりしていくと,8分ほどでインストールが終了してしまいました.あまりに簡単で,CD-ROMを抜いて,再起動しても,あっという間にOSが立ち上がってしまいます.感覚的にはMS-DOSの何もオプションがない状態みたいです.終了も速いです,クライアント用OSとして,すごく感じがいいです.

以下略


Copyright 1999 下田和正