最新のネットワークアダプタの機能を知る Intel PRO/100+ インテル(株) 本間 暢 |
発展するネットワークの中で,ネットワークを構成する機器の発達も著しいものがあります.求められる機能や規模の拡大などにより,こういったネットワーク機器には単に通信する以外のさまざまな機能が付加されてきました.ここでは,インテル(株)のクライアント向けの最新アダプタであるIntel
PRO/100+マネージメント・アダプタについて解説します.
主に企業内でPCを使用する場合,PCの数が少ないうちは単にPC間で通信可能な機能をPCに付加するのがLANアダプタの主な機能でした.この重要性は現在も全く変わっていません.しかし,PCの台数が増え,メンテナンスにかかる労力がPC台数の増加にともない大変コストのかかるものになってしまっているのも事実です.また,インターネットの急速な普及と共に,ネットワークの利用方法が変化し,扱うデータの重要性が増していくことで,PCによるネットワークへの信頼性が問われるようになってきました.
通信機能
ご存じのように,LANアダプタの主要な機能はPCがほかのPCとコミュニケートすることです.LANアダプタの通信機能において重要なのは,いかにCPU負荷率を抑えつつ,高いネットワークパフォーマンスを達成するかということになります.Intel
PRO/100+マネージメント・アダプタは,「アダプティブテクノロジ」と「IPレシーブ・チェックサム・オフロード」という2つの機能により,低いCPU負荷率で高いネットワークパフォーマンスを実現しています.
ここで,アダプティブテクノロジという言葉は,次の3つの技術の総称となっています.
(1) ネットワークに対する動的なチューニング機能
ネットワークトラフィックのパターンに対して高度な監視を行い,パケットの送信間隔を混雑状況に応じて調節します.トラフィックレベルの変化に対して動的な設定調節を続けることにより,パケットの衝突を最小限に抑え,ネットワークパフォーマンスを向上させます.
(2) マイクロコードのアップデート
ドライバのアップデートにともない,Intel 8255xのLANコントローラに新機能を付加することで,ドライバのみのアップデートより高いパフォーマンスの向上を図ることができます.Intel
PRO/100+マネージメントアダプタはIntel 82559LANコントローラを搭載していますが,以前販売されていたIntel
Ether Express PRO/100+アダプタとドライバの互換性があります.
現在インテルのWebサイトにアップロードされている最新ドライバをIntel
EtherExpress PRO/ 100+アダプタで使用すると,搭載されている82558 LANコントローラのマイクロコードをアップデートし,IEEE802.3acタギングに対応します.このIEEE
802.3acに対応することで,IEEE802.1pによるパケットへの優先順位設定やIEEE802.1QのVLANに対応できるようになります.これらの技術はIntel
Ether Express PRO/100+アダプタの発売当時には存在していませんでした.
(3) PCに対する負荷を軽減する機能
Intelパフォーマンスチューニングと呼ばれるテクノロジを使用して,パケット受信時にそのつどCPUに対してインタラプトを入れるのではなく,まとめてからインタラプトを入れることにより,CPU負荷率を低く抑えることができ,PCのトータルパフォーマンスを向上できます.社内テストでの結果では,CPU負荷率を最大20%抑えることができました.
また,IPレシーブ・チェックサム・オフロードにより,Intel
82559LANコントローラがハードウェアでIPパケット受信時のチェックサム計算を行い,CPUへの負荷をさらに軽減できます.
管理機能
Intel PRO/100+マネージメント・アダプタは,製品名にマネージメントの名が付くようにPCに管理機能を付加することに主眼を置いた製品となっています.ここでは,PCの最新の管理構想であるWfM2.0との関わりを紹介します.
WfM(Wired for Management)は既存の管理システムと共存可能な,統一された管理環境を提供するために提唱されている標準仕様です.この標準仕様が目指すものは,PCのメンテナンスコストの削減です.LANの規模が大きくなればなるほど接続されているPCのメンテナンスに関するコストは上昇します.また,場所などの物理的な制約から,同一のメンテナンスを行うのに,さらにコストが上乗せされることになります.このようなPCの維持管理に対して,リモートでメンテナンスを行えるようにし,時間と距離にかかっていたコストを削減するのがWfMの目的の1つです.また,個々のPCを一括管理することで,ネットワークに接続されているPCの構成情報を集中管理し,将来のアップデートプランを立てることでPCの効果的な利用が図れることになります.
現在WfMは2.0が最新ですが,この中でデスクトップPCに必須となっている2つの項目(WoL,PXE)をIntel
PRO/100+マネージメント・アダプタは提供します.
● WoL(Wake on LAN)
WoL機能とは,ネットワーク経由でPCを起動するテクノロジです.メンテナンス作業は社員退社後や休日などに行われることが多いものですが,電源OFFのPCやスリープモードに入っているPCを1台1台起動してソフトウェアのアップデートやドライバのインストールといった作業を行うのは非効率的で時間もかかります.PCをリモートで起動できれば,1個所から複数のPCを起動し,管理ソフトウェアからアップグレードやソフトウェアのインストールを行うことにより,これらの時間を大幅に短縮することができます.
WoL機能は,マジックパケットやその他のWoLパケットによってPCを起動する技術です.このため,PC上のLANアダプタにはPCの電源OFF時やスリープ時にもPCI
2.2対応のPCIバスまたはWoLコネクタにより,LANアダプタにスタンバイ電源が供給されます.この時,消費電力は約0.7Wほどです(5VSB時).WfM2.0でデスクトップPCには必須の機能となっています.
● PXE(Preboot eXecution Environment)
PXEは前述のWoLテクノロジと組み合わせて複数PCのリモートメンテナンスに用いられるテクノロジです.現在の最新規格はPXE
SPEC 2.0です.PXEプログラムはIntel PRO/100+マネージメント・アダプタ上のフラッシュメモリに格納されており,BIOSのアップデートやOSアップデート,インストールに主に使用されます.
PXE Client は起動すると,DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)を使って自分をブートさせてくれるブートサーバー(つまり,PXE
Server)を探します.そしてPXE Server から PXE Clientに対してブートに必要なプログラム(ブートイメージ)が,PXEプロトコルの定める手順で転送されます.これにより,PXE
Server上にあらかじめ作成しておいたインストールイメージを実行し,OSなどのインストールが無人で行えることになります.
PXE Server製品としては,Windows2000サーバーにPXE Server機能が標準で搭載する予定です.
CoS(Class of Service)
IEEE802.3acによってフレームを拡張してタグ情報を埋め込む規格が規定されました.この規格により,パケットに優先順位を付けたり,複数のスイッチングハブなどをまたがるVLAN(Virtual
LAN)の情報を設定することが可能になりました.これらの機能は各社が独自技術で実現させていましたが,標準規格が規定されたことで,ネットワークを有効に利用するこれらの技術をメーカー間の互換性の問題を意識することなく使用できます(図1).
ただし,フレームを拡張しているので,イーサネットであれば,最大1,518バイトであったものが1,522バイトの大きさになります.このため,古いネットワーク機器などでは,これらのパケットをロングフレームと判断して破棄してしまうものもあるので注意が必要です.
以下略
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