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K7メインボード登場

岩村 益典

Athlon(K7)の登場

 昨年から「でるぞ,でるぞ」と言われていたK7が,Athlonという名称でリリースされることになりました.いままでAMD社は,Intel製CPUと非常に互換性の高いCPUをリリースしてきました.そして,Socket7 CPUのK6-2は,Intel社がSocket7 CPUをリリースしないこともあって低価格CPUの定番となり,続くK6-IIIは高性能Socket7 CPUとして根強い人気を得ています.
 そもそも,Intel社がSocket7 CPUを断念し,Slot1 CPUへと方向転換を行ったのは,互換CPUの台頭に歯止めをかけるためと,Socket7では,高速な2次キャッシュなどを外部にたやすく搭載できないことなどが技術的な理由だと考えられます.そして,Intel社がSlot1を発表したとき,当然ユーザーはAMD社からもSlot1 CPUがリリースされることを期待しました.それが,Athlon(K7)でした.AMD社はIntel社を超える製品をリリースしようと,AthlonをSlot1 CPUとはせず,元DEC製Alpha CPUの技術を採用した高性能高速CPUとし,SlotAという新スロット形状を提唱しました.スロットでの互換性を犠牲にした分,独自に設計,高性能を実現,ついにIntel社を越えようとしているのです.

Athlonについて
 Athlonは,SlotAに取り付ける仕様で,外形上はPentiumIIとそっくりです(写真1).しかし,中身はAlphaの技術を利用した,200MHzシステムインターフェースでの動作を実現しています.高クロック動作が可能なように最適化されたスーパーパイプライン・スーパースカラーマイクロアーキテクチャを採用した第7世代のx86互換CPUで,高速浮動小数点演算を実現しています.また,キャッシュについてはオンチップで128KBのL1キャッシュ,プログラマブル高性能バックサイドL2キャッシュインターフェースを搭載しています.拡張3D Now!技術も搭載し(SSE命令はサポートしていない),マルチメディア処理への最適化も図られています.マルチプロセッサにも対応できるEV6バスプロトコルもサポートです.

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 Athlonは,最初500MHz($324),550MHz($479),600MHz($699)がリリースされます(価格は,1,000個ロット単価). 
 なお,今回リリースされるAthlonとそのメインボードは,いわゆるDIY市場向けのものではなく,OEMシステム市場を対象としています.DIYユーザーが自由にメインボードやCPUを購入できるのは今年の末になりそうです.

BIOSTAR製のAthlonメインボード
 AMD社はAthlonメインボードについて,パーツの配置やプリントの配線長まで指定しているくらいに慎重になっています.そのため,Athlonメインボードは各社とも同じような作りになっています.今回はBIOSTAR製のAthlonメインボードを紹介しますが,AMD社の意図を反映した作りになっているとのことです(写真2).
 初期ロットK7は発熱が大きく,SlotAのそばに大きなヒートシンクがついています.なお,SlotAは,外見上Slot1と同じなので,PentiumII/IIIなどを取り付けることができそうです.しかし,スロットの向きがSlot1と逆になっているので,基板上のヒートシンクが邪魔になってファン付きPentiumII/IIIなどを挿し込むことはできません.

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Athlonの今後
 Athlonの優秀性については全く問題はないものの,価格的に高価なのが現時点での難点です.Athlonは独自仕様なので,今後の価格低下について,少し不利な点が残ります.また,Intel社もAMD社に負けているわけにはいきませんから,Celeronの価格を下げK6-IIIに対抗し,また,技術的にも2次キャッシュ回路をダイ上に搭載可能になったため,PentiumIIIを再びSocket370タイプに戻そうとしています.
 このため,Intel製CPUは,Slot2を除き,すべてソケットタイプを採用することになり,Slot1メインボードは姿を消す運命です.独自仕様のAthlonがサーバーなど特殊用途に限られるのか,DIYユーザーでも使える高性能CPUとなるのか,この1年が勝負といえます.


copyright 1999 岩村 益典