SOHO時代のUNIX管理と活用の記録
(第8回) モバイルLinuxインストール記 倉光 君郎 大人気のノートPC,SONY製VAIO C1-R にRedhat Linuxを入れてみました 今までの連載では,PCを自作して,そこにLinuxをインストールしてきました.自作PCの場合,Linuxでの動作確認済みのハードウェアを手堅く選んで構成することができます. |
ノートPCとLinux
ノートPCは,小型で人気の商品です.現在では,多くのPCユーザーがノートPCを活用しています.ところで,ノートPC上にLinuxをインストールしているユーザーは,どれくらいいるのでしょう?
まず,デスクトップPCでLinuxを活用している人なら,きっと,自分のノートPCにもLinuxをインストールしてみたくなるでしょう.最近の傾向は,4GB以上のハードディスクを搭載したノートPCが主流となってきました.有り余っているWindows
98領域をちょっと削るだけでも,十分なLinuxインストール空間を作れるでしょう.
また,Windows 95/98を動作させるには少々苦しいスペックになった古いタイプのノートPCに,Linuxをインストールしている人も結構います.より軽いOSで古いマシンをリサイクル利用する例です.筆者自身も初期のPentiumノートを消費電力の少なさが気に入って,SOHOサーバーとして再活用しています.
ただし,ノートPCにLinuxをインストール&セットアップするときは,デスクトップPCでは考えられない面倒な作業もいくつかあります.ここでは,最新のノートPC
VAIO C1-RにRedhat Linux5.2 (日本語版)をインストールして,最近のモバイルLinux利用環境を見ていきたいと思います.
SONY製VAIO C1-Rについて
今回,Redhat Linux5.2JをインストールしてみるノートPCは,SONY 製のVAIO C1-Rです.ただし,基本的なハードウェアスペックは,ほかのVAIOノートとそんなに多く変わりません.まず,C1-Rの仕様書を見ながら,ハードウェア的な相性を見てみましょう(表1).
市販のPCへのLinuxインストールでは,ビデオとサウンドが大きな鍵になります.ただし,VAIO
C1-Rに搭載しているNeoMagicやSound Blaster Proは,Linux上で既に十分な動作実績があります.単純にLinuxをインストールして起動してみるだけなら,全く問題とならないでしょう.
次に,C1-Rの付属周辺機器に関して見てみましょう(表2).
C1-Rの大きな特徴は,MOTION EYEと呼ばれる小型デジタルカメラです.ただし,この機能に関しては,技術資料が乏しく,(分解して調べてみたという人によると)どうやら
NeoMagicのグラフィックチップに直結して制御されているらしいとのことです.現在のところ,Linux側からデジタルカメラを制御するのは,絶望的でしょう.
PCカードスロットは,多くのノートPC上で動作確認されています.CardBusやZVポートに関しては,動作制限があるかもしれませんが,実際の利用では個々のPCカード用デバイスドライバの存在のほうが問題となるでしょう.
内蔵モデムは,モバイル活用では必須機能となるでしょう.ぜひとも,内蔵モデムを経由して,PPP接続したいものです.それ以外にも,USBや赤外線ポートなど,新しいインターフェースがLinuxでどの程度利用できるのか,調べてみようと思います.
それでは,実際にRedhat Linux 5.2Jのインストールとモバイル環境のセットアップをしていきます.
パーティションの切り直し
まず,LinuxをインストールするためのHDD領域を確保する必要があります.
自作PCの場合は,HDDはまっさらな状態なので,HDDのフォーマット時に,Windows領域とLinux領域を計画的に切り分けることができます.しかし,市販のPCの場合,そう簡単にはいきません.購入したとき,既にすべてのHDD領域をWindows98が占めているからです.
そこで,HDDパーティションの切り直しが必要になります.これが最初の関門と言えます.
Windows 98付属のFDISK(MS-DOS自体から継承されているコマンド)は,パーティションを切り分ける専用のツールです.しかし,FDISKは,あくまでもHDDディスクの未使用領域に対してのみ有効です.今回のように,HDD領域をすべてWindows98用に使い切っている場合は,出番はありません.
もちろん,Windows98自体を再インストールする方法もあります.それはWindows領域をすべてバックアップを取ったのち,FDISKで新しくWindows領域とLinux用領域を作るのです.ただし,バックアップしておいても長い間使い込んだWindows環境をすべて消し去るのは心理的に抵抗があるところです.何とか,フォーマットのし直しだけは避けたいものです.
● パーティションニングツール
パーティショニングツールは,既存のWindowsを初期化することなしに,HDD領域のリサイズ,移動,変換を行うツールです.
FIPS.EXEは,有名なフリーソフトウェア版パーティショニングツールです.Redhat
LinuxのインストールCD-ROMにも収録されています.FIPS.EXEは,非常に歴史もあり,多くのユーザーが実績を重ねてきたツールです.ただし,FAT32の登場以降,ちょっと動作に不安を感じるところもあります.
そこで今回は,市販のパーティショニングツールの大御所的存在であるPartition
Magic 4.0を使ってみました.Partition Magic 4.0は,FAT16,FAT32に加え,FAT16X,FAT32X,HPFS,NTFS(含:WindowsNT
SP4からサポートされた新しいバージョン),さらにLinuxのext2
のファイルシステムに対応しています.Linuxユーザーにとっては,ext2対応というところが何とも魅力的なところです.
さらに,Partition Magic 4.0には,BootMagicという名前の専用のマルチOSローダーが付属しています.味気ないLILOに比べ,GUI風のOS切り替えが可能になります.
● Partition Magicの操作
Partition Magicにおけるパーティションの切り直し操作は,Windows98上のGUIから行えます.現在のWindows98の領域4.3GBをマウスでつかんで,グイっと希望の大きさにリサイズするだけです(図1,図2).あとは,MS-DOSモードで再起動され,自動的にパーティション領域が変わります.非常に簡単です.
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<図1>Windows 98の領域を マウスでリサイズする |
Partition Magicは,Windows98領域の空き領域分だけ,リサイズで小さくすることができます.あらかじめ,プリインストール済みの不要なアプリケーションを削除しておくと,より大きな領域が確保できます.
ちょっと注意するところは,Partition Magicを使ってリサイズする前に,HDDのエラーチェックと障害の修復をしておくことです.クラスタなどに障害が残ったままパーティションのリサイズを強行すると,致命的エラーが発生し,作業が中断されます.
今回はPartition Magicを用いて,4.3GBバイトのWindows領域を約3.3GBまで小さくしました.これで,Linux用に約1GBの未使用領域を確保できたわけです.
以下略
copyright 1999 倉光 君郎