PC/AT互換機の歴史


copyright 岩村 益典 1996-1999

 Windows98の時代になって,我が国でもますますそのシェアを拡大してきているPC/AT互換機.DOS/Vとも呼ばれ,その起源は,IBM社が1981年に発売した「IBM PC」にあります.その後発売された「PC/AT」は,IBM社がオープンアーキテクチャの方針を取ったこともあり,互換機が多く発売され,世界の標準機になりました.
 DOS/Vマシンは日本IBMが開発したもので,ソフトウェアで世界の標準機「PC/AT互換機」というハードウェア上で,日本語環境を利用できるようにするものです.CPUの高速化やWindowsの普及が,DOS/Vをまさに我が国の標準機へと変貌させようとしています.
 日本IBMは普及のためにOADGを作りました.
DOS/VはMS-DOSという文字ベースのOSでした.Windows95,Windows98は,グラフィカルな画面を利用するOSです.WindowsNT 4.0の次のバージョンはWindows2000となる予定です.こちらは企業ユーザーが利用しています.
 Windows2000の出荷後,Windows98の後継のOSが出荷される予定です.
 1998年に,Windows以外のOSとしてLinuxが注目されています.年末にはBeOS R4Jが発売され,ユーザーは,自分に合ったOSを利用できるようになってきています.


DOS/Vとは

 DOS/Vは,ハードウェアの名称ではありません.世界の標準機である「PC/AT互換機」上で日本語環境を実現する基本ソフトウェア(OS)です.ですから,DOS/Vマシンとは,DOS/Vが動作するマシンということになるのでしょう.
 ハードウェアの点からいえば,IBM社の「PC/AT互換機(単に:AT互換機)」ということになります.しかし,現在のマシンは,発売当初のPC/ATの仕様から大きく進んでいます.もはや,元となるマシンは存在せず,DOS/Vマシンという新たな標準マシンができあがっている,というのが実状です.
 なお,DOS/Vの「V」はグラフィックの仕様である「VGA」の「V」のことです.

DOS/Vの起源

1981年 PC
CPUはi8088
1983年 PC/XT
PCの機能拡張版
1984年 PC/AT
CPUはi80286:オープンアーキテクチャ,拡張性などで互換機が登場.世界の標準機に.
1987年 PS/2
IBM社が,特許料の必要なマイクロチャネルバスや,ATやXTの拡張ボードが使用できないクローズドな方針を打ち出したため,広くは普及せず.
1990年 ソフトウェアで日本語を表示する,最初のOS「DOS4/V」発売
1991年 OADG発足
1992年 日本IBMのAT互換機PS/V
このころWindows3.1が発売.CPUは486に移行し始めた.
1993年 富士通がFMVを出す.
1995年 WIndows95の発売でPC/AT互換機の普及が加速
1996年 エプソンがPC98互換機から撤退

OADG(Open Architecture Developers Association)

 日本IBM社の呼びかけで1991年3月に組織されました.正式名称は,「PCオープン・アーキテクチャ推進協議会」といいます.ソフトウェアとしてのDOS/Vを使って日本語をサポートすることを推進するハードメーカーおよびソフトメーカーを巻き込んだ団体です.

IBM社 PC/AT

 PC/ATは,IBM社が1984年に発売したパーソナルコンピュータです.PC/ATとは,"The Personal Computer for Advanced Technologies"の頭文字を取ったものです.

基本仕様:
  • CPU: 80286
  • 基本スロット: ATバス16ビットISAバス
  • 最大内蔵メモリ: 16Mバイト
  • プロセッサモード: リアルモード,プロテクトモード
特徴:
  • マザーボードにすべての機能を搭載するのではなく,拡張カードをバスに取り付けて機能を拡張する.
  • IBM社が,ハードウェア/ソフトウェアに関する技術資料を公開している.

これを「オープンアーキテクチャ」という.

 これらの特徴によって,複数のメーカー(Compaq,Dellなど)が,PC/ATの互換機を発売しました.IBMの製品に比べて価格的にも安く,拡張も可能な仕様で,PC/AT,PC/AT互換機が世界の標準機になったのです.
 我が国では,漢字の取り扱いのできないPC/ATは一般的に普及せず,NEC社のPC98シリーズが標準機となりました.

DOS/Vマシンを普及させたもの

 日本語の表示をソフトウェアで処理するDOS/Vは,ハードウェア(漢字ROMを持つ)で処理ができるPC98シリーズよりも日本語処理速度の点で劣っています.しかも,我が国にはPC98シリーズ用の多くのソフトウェアがあります.このため,DOS/Vは,当初から急速に普及したわけではありません.
 しかし,CPUが発達史処理速度が大幅に向上し,Windowsが普及した今日では,PC98シリーズでなければならない場合が減少してきました.Windowsでは,DOS/Vマシンでも,PC98シリーズでも,ソフトウェアで日本語を扱います.また,Windows対応ソフトウェアは,マシンがDOS/Vであっても,PC98シリーズであっても動作します.DOS版のPC98シリーズ用のソフトを使う必要がなければ,もうマシンにこだわる必要はなくなったのです.


もどる