ビデオカード


copyright 岩村 益典 1996-1999

 PC/AT互換機で,画面表示を行うための拡張カードをビデオカードといいます.メーカーによっては,ウィンドウアクセラレータ,グラフィックボードなどと呼んでいるところもあります.画面の描画速度は,ビデオカードのグラフィックス制御チップの性能とそのドライバソフトの性能に左右されます.
 画面に表示できる色数や解像度はビデオ用のメモリ(VRAM)の容量によって決まります.1024×768ドットで1677万色(これをTrue Colorと呼んだりする)を表示するためには,4Mバイトのメモリが必要です.
 メインメモリをVRAMとして利用するUMAが規格化され,それに対応したマザーボードも発売されています.
 PC/AT互換機はVGAを基本としており,それまでのIBM PCのビデオ表示規格を含んでいます.
1998年からPCIバスの拡張の規格でグラフィック専用のAGPバス が普及を始めました.
 1998年から急速にLCDタイプのディスプレイが普及し始めました.CRTと同じくアナログ入力に対応している製品が多いですが,デジタル入力の標準化も行われています.


ビデオカードの仕組み

 ビデオボードは,図で示すような四つの部分からできています.


DAC(Digital to Analog Converter)

 ディジタル信号をアナログ信号に変換する装置やチップのことをいいます.ビデオチップの中に含まれている場合があります.Brooktree社のRAMDACが有名です.

RAMDAC

 ビデオカードでは,VRAMからのディジタル信号をアナログ信号に変換するためのビデオDACが使われています.通常,ビデオDACには,カラーパレットとして使うRAMが含まれているのでRAMDACといいます.

VRAM(ビデオメモリ)

 ビデオチップがアクセスするメモリのことで,メインメモリで使われるDRAM,もしくはマスクレジスタやポートを複数持った専用のVRAMが使われます. 

ビデオBIOS

 マザーボード上にあるシステムBIOSは,ビデオに関する機能を持っていません.CPUからの命令に従って,データをVRAMに展開しビデオ信号を出力する機能はビデオBIOSが管理します.

ビデオチップ(アクセラレータチップ)

 本来,ビデオカードは,VRAMの情報をディスプレイに表示する機能のみを持っていました.この場合には,画面イメージをCPUが計算するので,CPUの負担が大きくなります.そこで,CPUの負担を軽くするためにビデオチップが使われるようになりました.現在では,ビデオチップの載っていないビデオカードはありません.
 ビデオチップとして有名なものに,Trio32/64/64V+(S3社)やMach64,Rage( ATI TECHNOLOGIES社などがあります.

VGA(Video Graphics Array)

 1987年にIBM社が発表したグラフィックの表示規格です.640×480ドットで16色の表示や320×200ドットで256色が表示できます.
 それまでつかわれていたMDA,CGA,EGAを含んだ規格です.このVGAをIBMが発展させたのがXGA/XGAIIですが,サードパーティが作ったSVGAに飲み込まれてしまいました.

MDA(Monochrome Display Adapter)

 初期のIBM PCに利用されていた規格です.文字キャラクタのみでモノクロ表示します.画面表示は,80桁×25行の文字表示解像度は720×350ドットです.

CGA(Color Graphics Adapter)

 グラフィックモードとテキストモードという二つのカラー表示モードを持っています.解像度は642×200ドットで2色表示にすることができます.

EGA

 PC/ATとともに開発された規格です.解像度640×350ドットで16色表示することができます.我が国のAXマシンはこのEGAを拡張したJEGAを採用していました.

SVGA(Super VGA)

 VGAを基本にして,機能を拡張をした規格です.640×480ドットの256色表示や800×600ドットの16色表示から,1024×768ドット,1280×1024の1677万色表示画可能なものまでいろいろあります.元来,明確な規格があったわけではないので,業界は,VESA(Video Electronics Standards Association) を設立しSVGAの規格を標準化しました.
 様々な解像度に対応するために,PC用のディスプレイは,ビデオ出力に合わせて同期のとれるマルチスキャンタイプが市販されています.VGAでは水平周波数は約31kHzです.

XGA (eXtended Graphics Array)

 VGAの上位モデルとしてIBM社が開発したグラフィックの表示規格で,解像度は1024×768ドット,表示色は16色(メモリの追加で256色)です.現在ではSVGAのほうが機能が高いので,XGAは普及していません.,解像度を1024×768ドットと表現するときにXGAと呼ばれることはあります.

ハードウェアDCI

 DCI(Display Control Interface)は,Windows3.1で効率よく動画表示を行うために制定された規格です.ビデオチップ自身がDCIに対応している場合をハードウェアDCI対応といいます.Windows95では,DCI機能はDirectDrawに吸収されました.

マルチスキャンディスプレイ

 最近のディプレイは,複数の画面解像度に対応するために,マルチスキャンタイプが多く用いられています.ディスプレイは,画面の上に走査線が移動して画像を表示しています.走査周波数(水平同期周波数,垂直同期周波数)が高いほど,高解像度で表示できます.
 表示方式には,1枚の画面を2回で表示するインターレイスモードと,1回で表示するノンインターレイスモードとがあります.パソコン用のディスプレイは短残光型なので,ノンインターレイスモードのほうが画面はちらつきません.

DirectDraw

 DirectDrawは,VRAMを直接アクセスするのに近い形をすることにより高速描画を可能にするWindowsAPIです.ゲームなどでは,ハードウェアを直接制御する専用機に比べてWindowsのソフトが速度で対抗できないために用意されました.はじめはWinGとして登場しましたが,ハードウェアも規格化されてDirectDrawになりました.現在,DirectSoundなども合わせてゲーム専用のAPIをDirectXと呼んでいます.
 DirectXは3あたりからゲームに使われるようになり,最近では,DirectMusicが使えるようになったDirectX6.1が利用されています.
 DirectX以外に,OpenGLという規格に対応したビデオカードもたくさんリリースされています.これらは,CADなどの用途で使われます.

AGPバス

 PCIバスを作ったIntel社が,メインメモリをグラフィック用にも使えるように,転送速度を向上させたAGPx2を発表しました.PCIバスの転送レートを基準にx1,x2,x4があります.1998年から1999年はx2が普及しています.
 1998年後半から,ビデオメモリは8Mバイトから16Mバイトを搭載する製品が増えてきました.また,2万円を切る価格に落ち着いています.


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