プロローグ IEEE1394で行こう!(1)

はじめに


はじめに

 21世紀に向かってメディア統合(Media Covergence)が着実に進んでいます.その中でも,本書で解説するIEEE1394がおもしろそうだと筆者は早くから判断し,製品のアイデアなどを携え,いろいろなメーカーなどに押し掛けてプレゼンテーションを行ってきました.しかし,立ち上がりそうでなかなか立ち上がらないのがIEEE1394です.

 一時期,アップルの高額なロイヤリティがIEEE1394の採用を検討していたメーカーやユーザーに混乱を発生させました.高額なロイヤリティの要求は,IEEE1394へ取り組んでいた企業に将来の不安を感じさせるに十分なものでした.

 幸いなことに,ロイヤリティは低額に変更されたようですが,特定の会社が特許料を簡単に操作できるとなると,開発する側はちゅうちょしてしまいます.そのため,インテルはUSB2.0を発表し,IEEE1394離れを宣言してしまいました.

 しかし,ことはそれほど単純ではありません.コンピュータがコンピュータだけの世界に閉じこもるなら,USBやSCSIで十分かもしれません.しかし,時代は確実にメディア統合の方向に進んでいます.今後,希望のもてる分野といえばディジタル家電であり,高速ブロードバンド,家庭内ネットワークであり,モバイルです.そして,それらに対するサービスが加速していくと予想されます.

次世代インターフェースの登場

 コンピュータの性能は年々加速し,それに合わせて記憶装置などの周辺装置もますます高速,高度化しています.従来,家電製品とコンピュータ製品は明確に区分されていました.しかし,今日では,コンピュータが家電化しつつあります.また,家電製品もディジタル化が進んでコンピュータと共存できる環境がそろってきました.

 こうした環境にあって,これらのインターフェースが考え直されつつあります.それに対応する製品も少しずつですが現れています.次世代インターフェースの候補として挙げられている,USB,IEEE1394,Fibre Channel,SSA(Serial Storage Architecture),次世代SCSI,無線,電力線などです.

 これらは性能的な面だけでなく,その特徴を活かし,棲み分けが明確になりつつあります.また家庭においては,HomeRF,CEBus,HomePNA,IrDA Controlなどの無線や既存のインフラを使ったものも具体的に話が進み始めています.

 IEEE1394は,ほかの方式と違い,コンピュータとコンシューマの両方で整備が進んでいるという特異なインターフェースです.また,メディア層の上位に位置する,HAVi注1,Jini注2,およびUPnP注3なども発表され,メディアを統合するための環境は確実に進んでいます.

 本書は,IEEE1394のアーキテクチャを理解することはもちろん,実際のIEEE1394ハードウェア,ソフトウェアを開発し,規格の話と現実の話を照らし合わせながら,IEEE1394の理解をより深めるための試みです.


注:1 Home Audio/Video intreoperabillity.フィリップス,ソニー,松下など日欧8社が提案した,家電製品を制御するための規格.

注:2 サン・マイクロシステムズが提案する,Java技術に基づいたハードウェアに依存しない分散オブジェクト環境を提供する技術.

注:3 Universal Plug and Play.マイクロソフトが提供する,従来のPnPを元にして家電機器とコンピュータを接続する技術.


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北山 洋幸/大庭 政司/吉本 廣雅/有田 大作 

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