連載 第15回 “郵便受け”サーバからメールを取り出すしくみ
前回は,電子メールが配達されるしくみについて解説しました.電子メールは,SMTPというプロトコルを使ってメールサーバを次々と渡り歩き,受け取り主の郵便受けに到達します.今回はこの郵便受けからメールを取り出すためのプロトコルPOP3について解説します.その手順を理解していただくために,Telnetクライアントソフトウェアを使って,手動で郵便受けサーバからメールを取り出す方法を紹介します. メールシステムの復習 まず,電子メールシステムについてもう一度復習しておきましょう. 図1はメールシステムの全体図です.送り主は,まずメールクライアントソフトウェアでメールを作成します.このメールを郵便局に相当するメールサーバに送信します.このときメールクライアントからメールサーバにSMTPを使って通信を行います. メールは,最終的に受け取り主の郵便受けに届けられなくてはなりませんから,送り主の最寄りのメールサーバは,この郵便受けにできるだけ近いと思われるメールサーバにメールを送信します.これは送り主に近い郵便局から,受け取り主の最寄りの郵便局へ,いったん郵便物が配達されていく流れと同じです. 現在のインターネットでは,図2のようにプロバイダとインターネットの接点の部分にメールサーバが設置されています.また,プロバイダの中でも受け取り主の郵便受けに届くまでに何台かのメールサーバを経由するしくみになっています. 大手プロバイダでは,膨大な数のユーザーを有しているため,1台のコンピュータですべてのユーザーの郵便受けを保持することが困難になっています.また,メールサーバソフトウェアはバグが多くなりやすく,セキュリティホールを作りやすくなってしまいます.もしセキュリティホールがあると,ほかのユーザーのメールを読み書きしたり,削除することができてしまいます.そのため,直接インターネットからユーザーの郵便受けのあるメールサーバにアクセスできないようにするために,何台かのメールサーバをわざわざ経由させることもあります. 〔図1〕メールシステムの送信から受信まで 〔図2〕現在のメールサーバの構成