メール配送のしくみ
- では図6で,送り主が作成したメールがインターネットの中をどのように配送されていくかを,メールの作成から受け取り主が読むまでを順を追って見てみましょう.
まず,(1)送り主はメールソフトを使ってメールの本文を作成します.本文は,テキスト文やHTML文,画像ファイル,音楽ファイルなどさまざまな形式のデータを詰め込むことができます(データを詰め込むしくみは,次回以降に解説).本文を作り終えたら,ヘッダ部の情報となる送り主と受け取り主のメールアドレス,メールの題名を指定します.そしてメールソフトに送信を指示します.
送信の指示を受けたメールソフトは,送り主と受け取り主のメールアドレスから,封筒のあて名と差出人を決定します.通常は,送り主と差出人,受け取り主とあて名は同じものとなります.次にこのメールに関する管理情報をヘッダ部に追加します.これには,メッセージIDと呼ばれるメールを識別するIDや,メールの作成日時,Content-Typeなどの情報があります.これ以降は封筒に書かれたあて名と差出人の情報だけでメールが配送されていきます.また,メールのヘッダと本文をまとめてデータとして扱います.
メールを送信する準備が整ったら,(2)メールサーバにメールの送信を依頼します.メールソフトからメールサーバには,受け取り主のメールアドレスと差出人のメールアドレス,そしてデータが渡されます.つまり,封筒とその中身が渡されます.このときに使われるプロトコルがSMTP(シンプル・メール・トランスファ・プロトコル,エスエムティーピー)と呼ばれるものです.SMTPを使ってメールの送信を依頼することから,このメールサーバのことを,SMTPサーバとも送信サーバとも呼ばれます.
メールの送信依頼を受け取ったメールサーバは,(3)次にどこに送ったらよいかをDNSを使って調べます.以前,DNSの回(第8回,第9回)では,ホスト名からIPアドレスに変換するしくみについて解説しました.このしくみを使って,あて名のメールアドレスのドメイン名から,そのドメインの郵便受けに相当するサーバのIPアドレスを検索します.DNSを引くことで,メールサーバは郵便受けサーバのアドレスがわかるので,その郵便受けサーバにSMTPを使ってメールを伝送します.
郵便受けサーバがメールを受け取ると,(4)あて名を見てどの郵便受けにメールを入れればよいかを判断し,郵便受けにメールを入れます.これであて名に対応する郵便受けにメールが到着しました.
メールを受信したい人は,(5)郵便受けを定期的にアクセスしてメールが到着しているかどうかを確認します.そして,メールが到着していれば郵便受けからメールを取り出して,自分のコンピュータに転送し,画面に表示します.このとき使われるプロトコルがPOP3(ポスト・オフィス・プロトコル・バージョン3;ポップスリー)やIMAP(インターネット・メッセージ・アクセス・プロトコル,アイマップ)です.
メールクライアントは,郵便受けサーバにアクセスしてメールの操作をします.ですから,メールクライアントはPOP3クライアント,郵便受けサーバはPOP3サーバとなります.
メールクライアントが,送信するときにどのSMTPサーバと接続するか,受信するときにどのPOP3サーバと接続するかは,図7のようにメールアカウントの設定のときに指定します.ですから,SMTPサーバの設定がまちがっていると送信ができませんし,POP3サーバの設定がまちがっていると受信ができません.
〔図6〕メール配送のようす

〔図7〕サーバ指定画面のようす

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