1章 アパマン・ハムDXing

 

1−6 アパマン・ハムDXing

 これでアンテナをベランダに出しっぱなしにしておいても気兼ねをする必要がなくなりました.時間が空いたときにすぐにワッチできるのはとても気持ちのいいものです.

 21MHzを中心にDXingを楽しんでいこうと思います.さすがに8階建ての7階,良く聞こえます.特にアジア方面は連日59+でマレーシア,シンガポール,タイなどが入感しています.

 飛びのほうはどうでしょうか.7割くらいは2〜3回のコールでとってもらえますが,やはりちょっとパイルアップになるときついようです.マレーシアの日本人の局とつながったときに聞いてみましたら,やはり田中さんの音は柔らかめで今一つパンチに欠けるようです.パワーは3アマの法定最高出力の50Wをすでに出していますので,別の方法で改善しなければなりません.

 そこで着目したのがマイクロフォンです.雑誌やパソコン通信でDX向きと言われているマイクを探します.アメリカのアスタティック社製のマイクがコンテスターの間でも人気で,堅めの音がパイルアップに強い音質だそうです.さっそく購入し,送信音モニター回路を使ってリグをマイクにあわせてセッティングします.出力をダミーロードにつなぎ,RF出力を最高にしたままコンプレッション・レベル,音質,マイク・ゲインを調整します.納得のいく音質になったところで,今度は録音してチェックします.

 しゃべりながらモニターするのも実は限界があります.しゃべった音とヘッドフォンから流れる自分の声が混ざってしまい,最終的な評価は難しいのです(図1−17).録音端子からカセット・テープに録音し,後で聞いてみます.ちょっとマイク・ゲインを上げ過ぎていたようです.コンプレッション・レベルはちょうどいいみたい.マイク・ゲインをちょっと下げ,各つまみの目盛りに小さな印を付けます.

(図1-17)送信しながら自分の声をモニター

 

 

 今度は応答率も上がりました.目標をまずDXCCとして,しばらくやってみます.ラグチューもしてみたいので会社の英会話のサークルにも入って勉強したいと思います.

 CW? 実はブランクがあったのでDX局の速度についていけません.まず国内QSOで慣らしてからCWモードに下がることにしました.

お勧めのトランシーバー 
 HF〜430MHzオールモード・ポータブル機
「八重洲無線FT-817」

 筆者が開局したのは1976年,中学3年生でした.そのころはポータブル・トランシーバー全盛の時代でした.50MHzAM/FMの松下のRJX-601,その後50MHzSSB機トリオのTR-1300とアイコムのIC-502が市場を席巻しました.筆者もお小遣いをためてTR-1300で開局,出力1.5Wながら,軒下すれすれのダイポールでアマチュア無線を満喫していました.

 今回試用したFT-817はその頃の感動を思い起こさせます.手にしてすぐに無線を楽しめそうな雰囲気は,当時のそれと全く同じです.違うのはその重さで1kg弱でとても軽く,なんといってもHFから430MHzまでオールモードで楽しめること.

 まず居間のテーブルの上に小型の安定化電源を用意し,2階のベランダに設置した430MHz用ホイップ・アンテナをつないでみます.筆者の自宅は都内なので,430MHzのFMがとてもよく入感します.今度は50MHz用のホイップ・アンテナをつないでSSBを聞いてみます.小さなダイヤルながら,なんのストレスもなく同調できます.

 今風のリグらしくマニュアルを見ると多機能であることがわかりますが,パネルのボタンは驚くほど少ない.しかし初期設定を終えてしまえば少ないボタンでも操作に支障はありませんでした.

 出力5Wが十分かどうかは運用スタイルにもよりますが,筆者にとっては十分と言えます.インターフェアの心配はないし,電源も小型のもので十分.アンテナの工夫しだいでHFから430MHzまでをオールバンドで楽しめます.

 筆者を含むベテランにとっては,この小型オールバンド・オールモードを出張に持っていかない手はありません.2A前後の小型のスイッチング電源を自作すれば荷物も軽くてすみます.エレキーも内蔵されているので小型のパドルを用意して7MHz,10MHzのCWを楽しむのもいいでしょう.

 FT-817は,ハンディ機とモービル機の間の「ポータブル機」のカテゴリーに新しい風を吹き込んでくれました.こういったポータブル機で開局して数年後にステップアップという昔のスタイルが戻ってきて,バンドが活性化されることを願って止みません.

写真1 HF〜430MHzオールモード機FT-817.ハムの運用スタイルを変える可能性を持つ

 

写真2 運用中の著者.アパマンにも相性がよさそう,と嬉しそう

 

 


Copyright 2000 原岡 充

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