第1章 パワーMOSFETとパワー・トランジスタの違い(3)

電源電圧と負荷電流

 

パワーMOSFETはパワー・トランジスタよりスイッチング速度が速い

 一般的にパワーMOSFETはスイッチング速度が速いことが知られています.しかし同一条件で比較した場合のスピード差はあまり一般的に知られていません.

実験回路

 そこで前出のパワー・トランジスタ2SC3345とパワーMOSFET 2SK2614を使って,スイッチング速度の比較をしてみます.

 測定回路を図3に示します.この図からわかるとおり両者の測定条件はすべて同じです.

(図3)

パワーMOSFETとパワー・トランジスタのスイッチング速度の比較実験回路

(約6Kバイト)

 

電源電圧と負荷電流

 コレクタ電流IC とドレイン電流ID をともに10Aとします.また,2SC3345と2SK2614の負荷抵抗RLT RLM をともに3Ωとします.電源電圧は30Vです.

駆動電圧

 2SK2614のカタログを見るとロジック・レベル駆動(4V)を保証しているためVGin =5Vとします.2SC3345の駆動電圧VBin をこれに合わせて,

  VGin VBin =5[V]

とします.

ベース抵抗RB

 図4に示す2SC3345のhFEIC 特性からIC =10Aにおける直流電流増幅率hFE を求めるとhFE =70と読み取れます.この値を使って2SC3345が十分飽和するベース電流IB を算出すると,

  IB ==0.14A

となります.したがってベース抵抗RB は,

  RB ==28[Ω]

  ただし,

  VBE:ベース−エミッタ間電圧[V]

と求まります.ここでVBE =1Vとしました.

 なお,実際の抵抗はE12系列から27Ωを選びました.ゲート抵抗RG も条件を合わせるために27Ωとします.

(図4)

パワー・トランジスタ2SC3345のhFE-IC特性

 

実験結果

 スイッチング波形を写真1写真2に示します.

(写真1)

パワーMOSFET2SK2614のスイッチング特性

(写真2)

パワー・トランジスタ2SC3345スイッチング特性

(約30Kバイト)

 

 

 明らかにパワーMOSFET 2SK2614のほうがパワー・トランジスタ2SC3345よりもスイッチング速度が速くなっています.

 以下にそれぞれのターン・オフ時のスイッチング特性を示します.

立ち下がり時間tf

 パワーMOSFET 2SK2614:170ns

 パワー・トランジスタ2SC3345:241ns

オフ遅延時間tOFF(=td(OFF)tf

 パワーMOSFET 2SK2614:355ns

 パワー・トランジスタ2SC3345:667ns


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