● カーネルコンフィグレーションの詳細

 前述したように,X Window環境ならばxconfig(図2)を,そうでなければmenuconfig(図3)を使用することができます.

〔図2〕
xconfig


〔図3〕
menuconfig

 そこで,ここでの基本的な操作を説明します.必要な機能をカーネルに含めるなら‘y’を,含めないなら‘n’を,そしてモジュールとして必要なときに主記憶にロードするなら‘m’を選択または入力します.

 カーネル2.4の設定項目は非常に多岐に渡るため,すべてのオプションを詳細に説明していたら一冊の書籍になってしまいます.それぞれの設定オプションについては,重要な個所や,デフォルト値では問題がある部分についてのみ,表5に示します.

 なお,モジュール化した場合インストールするにはinsmodコマンド,削除するにはdelmodコマンドを使います.

 なお,再度確認しますがハードウェア環境を把握していないと正当な設定ができないので,わからない場合やあいまいな場合には2.4にアップグレードするのはやめたほうが無難です.

 さて,みなさんのマシンでカーネル2.4は稼動したでしょうか? 自分の環境に関して正確な情報が得られれば,必ずうまくいくと思います.

 今後,カーネルがバージョンアップされるたびに機能は増えていきます.新機能の恩恵を得るためにも,一度はカーネルの入れ替えに挑戦してみてください.

〔表5〕カーネルの設定オプション(重要な個所,デフォルト値では問題がある部分のみ
設定項目 説 明
Code maturity level options 開発中の設定オプションを表示するかどうかの設定.標準では無効となっている.

一般ユーザーには関係ないので,この機能は無効にする

Loadable module support モジュール機能を使うか否かを設定する.通常はこのままデフォルト値でOK
Processor type and features

Processor family

CPUの種類や搭載数,機能などを設定する

現在使用しているCPUの種類を選択する
ここでCPUの設定を間違えると動作しなくなるので注意が必要
ちなみにCoppermineコアのCeleronはPentium3で設定する

General setup

PCMCIA/CardBus Support

カーネルの基本動作の設定

ここで設定すればpcmcia-csモジュールは不要になるが,好みによって設定する

Memory Technology Devices(MTD) 主記憶以外でメモリデバイスを使用する設定

たとえば,組み込みシステムでフラッシュメモリにファイルシステムを構築することができる

一般ユーザーは‘n’でOK

Parallel port support パラレルポートを使用する場合,ここで設定する
Plug and Play configuration プラグ&プレイを使用するかどうかを設定する

なお,ISAも対応できるようになった

Block devices フロッピーディスクドライブ,パラレルポートに接続するIDE機器などの設定を行う

通常のIDE機器,SCSI機器は別の項目で設定する

自分の環境で必要なものを設定する

Multi-device support(RAID and LVM) ここでは,カーネルによるソフトウェアRAID,複数のパーティションやデバイスを一つにまとめて管理するLVM(Logical Volume Manager)の機能を使うかどうかを設定する

デフォルトではどちらも無効

Networking options カーネルがサポートするネットワークプロトコルやその機能を設定する.デフォルトでは,標準的なTCP/IPを中心としたネットワーク設定になっている

DECNET,Appletalkも使える

ここで,新機能のnetfilterが設定できる.パケットフィルタリングやNATの設定ができる

Telephony Support 特殊なインターネット電話のためのもの

一般的には設定不要

ATA/IDE/MFM/RLL support

IDE,ATA AND ATAPI BLOCK DEVICES

ATA/IDE機器を設定する

ここでIDEをモジュールにしてしまうとIDEディスクから起動できなくなるので注意が必要

標準では,IDE接続のハードディスクとATAPI接続のCD-ROMドライブをサポートするようになっている

その他の特殊なものを使用したい場合には,ここで設定する

IEEE support 最初の項目である開発中のオプションの使用を有効にすると設定できる
SCSI support SCSI接続機器の設定を行う
PCMCIAのSCSIアダプタが設定できるようになった
I2O device support Intelligent I/Oの設定を行う

まだ標準化の最中の規格なのでなじみがないかもしれない

Network device support ネットワークデバイスの設定をする,無線LANに対応できるようになった
Amateur Radio support アマチュア無線パケット通信の設定
IrDA(infrared)support 赤外線通信の設定

有効またはモジュールとして組み込んだ場合には,使用している赤外線モジュールのチップによってデバイスドライバを設定する必要がある

ISDN subsystem 不要
Old CD-ROM drivers(not SCSI, not IDE) SCSI,ATAPI以外のCD-ROMを使うことができる

一般的には設定不要

Input core support 入力デバイスを設定する

具体的な設定はCharacter devices,USB supportの項目で設定する

Character devices シリアルポート,マウス,ジョイスティックの設定をする
Multimedia devices Video For Linuxの設定ができる

Bt848のチップを搭載するビデオキャプチャカードであれば動作させることが可能

File systems 新機能としてはDVDで使用されるUDFファイルシステムが設定できる.Microsoft

JolieitやFATを設定すると便利

AMIGAのFFS,APPLEのHFSも使用できる

開発中のオプションの使用が有効なら「DevFS」の設定が可能

Console drivers コンソールのビデオモード,フレームバッファの設定.標準設定ではVGAテキストのコンソールが有効になっているのでこのままでOK
Sound サウンドカードの設定をする.一覧には,サウンドカードやサウンドチップの名前が表示される.ALSA,OSSともに使用できる
USB support USBマウス,キーボード,USB HUBなどは問題ない

オーディオデバイスはRoland UA-30を接続してみたが動作しなかった

ここではUSBコントローラ(UHCI/OHCI)の選択が重要

Kernel hacking 特定のキーを押した際に,カーネルの動作情報が書き出され動作状況を把握することが できるようになる設定

通常は設定不要

 

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