第1章 アプリケーションの書き換えが可能な
ICカードOS「MULTOS」によるカードアプリケーションの作成

 ICカードOS「MULTOS」は,バーチャルマシンの概念を導入し,異なるCPUアーキテクチャでもアプリケーションが動作するという特徴がある.アプリケーションの開発にはアセンブリ言語が使用されるが,C言語やJavaなどのコンパイラを用いることにより,それらの言語での開発も可能になる.また,セキュリティ面でも優れている.

 本章では,ICカードで幅広く使用されているOS,MULTOSについて,その概要とプログラミングを含めた実例までを解説する.  (編集部)

MULTOSの概要

  ICカードは,スマートカードとも呼ばれ,一般にはCPUが搭載されたICが埋め込まれています.これはパソコンにたとえれば,マイクロプロセッサが搭載されているようなものです.その場合,パソコンにさまざまなアプリケーションを追加して使うには,Windowsのようなオペレーティングシステムが必要となります.

 MULTOS(MULTi-application Operating System for smart cards)注1は,マルチアプリケーションに対応したICカード用オペレーティングシステム(ICカードOS)です.MULTOSの技術仕様は,MAOSCOコンソーシアムによって運営管理されていて,誰でも利用できるオープンな標準仕様になっています.MULTOS,MAOSCOについては,MAOSCOの公式ページ(http://www.multos.com/)に掲載されています.

 また,MULTOSの普及とその利用環境を向上させるために設立された非営利団体であるマルトス推進協議会のWebページ(http://www.multos.gr.jp/)では,MULTOSについて日本語で解説されていますので,一度覗いてみてください.

 MULTOSには,以下の特徴があります.

・すでに実用化されている,マルチアプリケーション対応のICカード用オペレーティングシステム
・すでに発行したカードに対して,アプリケーションの追加および削除が可能
・もっとも高いセキュリティレベル(欧州のセキュリティ評価団体ITSECの最高レベルE6)を達成
・金融や公共ICカードとして幅広く普及している
・世界各地で幅広い用途のプロジェクトが進行中

 それぞれについてもう少し細かく説明しましょう.


注1:MULTOSは、MAOSCOの登録商標.


インデックス
プロローグ カード社会とICカードの必要性
第1章 ICカードOS「MULTOS」によるカードアプリケーションの作成
 ◆MULTOSの概要
 ◆MULTOSの特徴

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