● PCのFSB,最近やたらと速くなっていませんか? 高速化の変遷がもっともよくわかるものの一つに,PC/AT互換機があります.CPUが年々速くなっている点が目に付きますが,ここでは外部バス,いわゆるFSB(Front Side Bus)に注目してみましょう. クラシックPentiumでは66MHzだったFSBが,Pentium?では133MHzになり,最新のPentium4では800MHzというものまで登場しています.ただしPentium4の場合には,800MHzといっても1クロックあたり4回のデータ転送が行われるので,実際のクロック信号の周波数は200MHzですが,それでも高速化されていることには変わりありません. しかしマザーボードに使われている基板は,FR4と呼ばれる昔から使われている一般的なもので,あれだけ多ピンのQFPやBGAを使っているのに,4層基板が普通なのです.CPUのクロック周波数ほどではないにしても,材質的に昔とそれほど変わらないプリント基板で,なぜこれほどの高速化が実現できたのでしょうか.その謎を解き明かすのが,今回の特集です. ● デバイス間データ転送の高速化 今回の特集の第1章では,ロジック回路の高速化について解説します.さきほどPC/AT互換機の例を説明しましたが,たとえばメモリモジュールを考えてみましょう.昔のSIMMは5V電源のDRAMでした.それが3.3VのSDRAM DIMMになり,DDR-SDRAMでは電源電圧が2.5Vになり,さらに信号振幅も低電圧化されています. そしてさらなる高速化手法として,Gbpsオーダのデータ転送では,差動伝送方式が使われています. メモリデバイスとチップセットなど,デバイス間データ転送の高速化のキーワードは次のようなものになるでしょう. ・電源電圧の低電圧化 ● 半導体製造技術の進歩が高速化を支える 第1章で詳しく解説していますが,高速化のキーワードとしてあげた差動伝送などは,じつは昔から使われていた技術なのです.ただし,昔は通常ロジック回路と差動伝送回路は別々のブロックに分かれ,その間には変換回路を必要としました. それが現在では,半導体製造技術の進歩により,一つのデバイスの中に実装することが可能になりました.これにより,高速データ転送に対応できるデバイスを安価に製造でき,1チップ化により基板面積も縮小できるなど,さまざまなメリットを生み出しています. USB2.0やPCI Expressなどには差動伝送技術が使われていますが,これは通常ロジック回路と差動伝送回路を,1チップで安価に作れるようになった今だからこそ実現できるバスインターフェースではないでしょうか. ● バス/インターフェースの高速化 ここでデータバスの高速化を考えてみましょう.単純に考えれば,バス幅を広げ,転送クロック周波数を上げれば,それだけで高速化を実現できます.しかしこの方法では,基板配線遅延などの問題で,クロックに対してデータの到着がばらついてしまい,高速化が難しくなるのです.これをふまえ,現在ではバス幅を狭くしたりシリアル化を採用するバスシステムが増えてきています. さらにクロックスキューの問題を解決するため,データとクロックを別々に送るのではなく,データにクロックを埋め込んで1本の線で伝送する方法も採用されています. バス/インターフェースの高速化のキーワードは,次のようなものになるでしょう. ・狭バス幅化 ● 特集の案内 今回の特集で解説する内容はイラストのとおりです. 一見すると,ボード上のデバイス間通信と,筐体間をケーブルで接続するインターフェースは,まったく別物に見えます.しかしそこで使われている高速化技術には共通するものがあり,いわゆる陸続きであることを忘れてはなりません.
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