送られたメールはどうなる?

 以上の項目により図11のメールから,図12のようにSMTPサーバを経由してメールが配送されたことが想像できます.
 メールヘッダのFrom行やTo行は,メール配送の流れとは関係なく,メールの文章の一部として扱われています.From行やTo行には,実際のメールアドレスとは異なったメールアドレスを指定することもできます.そのため,To行が自分あてでないメールが自分に届いたり,From行のメールアドレスにメールを返信してもメールが届かないことがあります.この場合,メールのヘッダ情報を観察して,実際にどこのメールサーバからどのようなメールアドレスに向けて送信されたメールなのかを確認しましょう.
 このようなメール配送の性質を使って,SPAMと呼ばれる悪質な勧誘メールの配送が行われており,現在のインターネットのメールシステムの大きな欠点となっています.インターネットができる前のUNIXシステムでは,UUCPと呼ばれる現在とは異なるメール配送システムが動いていました.そしてUUCPでやり取りされていたメールをインターネットで配送するためにSMTPが開発されました.そのため,SMTPとメールの中身の対応関係が非常に弱く,メールの中身のFrom,To行と,SMTP上のFrom,Toが完全に一致しなくてもよいシステムになってしまったと考えられます.


〔図12〕メールのヘッダ情報から予想できるメールの中継の様子
図12
 
 
 
まとめ
 今回はインターネットでメールを配送するしくみについて解説しました.
メールサーバが送信先のメールサーバを決める方法には,静的配送,MX配送,ホスト名配送の3つがある.
MX配送では,DNSのMX情報を用いる.
MX情報の優先順位を使って,1つのドメイン名で複数のメールサーバを設置することができ,メールシステムの信頼性を向上できる.
メールクライアントからメールサーバへメールを送るときにはSMTPが使われる.
メールサーバから次のメールサーバへメールを中継するときにもSMTPが使われる
SMTPはテキストベースのプロトコルである.
メールクライアントからメールサーバへメールが送られたときに,メールサーバでは必要な情報がメールのヘッダに追加される.
メールが中継されると,中継したことを表す情報がメールのヘッダに追加される.
メールのヘッダに含まれるFrom行,To行は,実際のメールの中継処理とは関係がないため,ヘッダのTo行が自分あてでないメールが届くこともある.


 次回は,郵便受けからメールを取り出すためのプロトコルPOPについて解説する予定です.
 


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