〔図3〕バス接続型の通信のしくみ

〔図3〕バス接続型の通信のしくみ


 バス接続型のインターフェースに必要な機能
 この方法は,例えるなら,潜水艦の音声伝達で使われていたパイプ(管)を使った音声伝達システムのようなものです.では,バス接続型の通信を考えてみましょう.図3のように,潜水艦の船内にパイプを配管し,そのパイプにT字型の分岐点をつけて,そこに口をつけます.人間は,その口に向かってしゃべります.するとその声はパイプの中を伝わって,パイプについた口から音が聞こえることになります.

● 返事のシステム
 では,AさんがCさんに質問をして,Cさんから答えを受け取りたい,としましょう.  Aさんはパイプの口に向かって,「今何時ですか?」としゃべります.すると,B,C,Dさんはみんなこの質問が聞こえることになります.そして,同時に「7時30分です」と答えてしまうかも知れません.
 Aさんは,Cさんに質問したかったのですが,B,Dさんにも質問が聞こえてしまうため,3人がみんな自分に対する質問だと勘違いして答えてしまったのです.
 では,どのようにすれば,Cさんにだけ質問できるでしょうか? それには「Cさん,今何時ですか?」と聞けばよいのです.
 するとB,Dさんは,自分に対して聞かれているのではないことがわかるので,答えません.Cさんだけが「7時30分です」と答えることになります.

● 特定者との通信
 では,次に,AさんとBさんが,Cさんに時間を聞くことにします.  Aさんの「Cさん,今何時ですか?」という質問に対して,「7時30分です」と答が帰ってくるのですが,この答えはAさんに対しての答なのか,Bさんに対しての答なのかわかりません.先ほどと同様に「Aさん,今の時間は7時30分です」と答えれば解決するのですが,「Cさん,今何時ですか?」という発言を,誰がしたのかわからなければ,それが「Aさん,・・・」であることがわかりません.
 つまり「Cさん,こちらはAです.今何時ですか?」と言う必要があるのです.このとき「Cさん」が送り先アドレス,「Aさん」が送り元アドレス,「今何時ですか?」がデータ(メッセージ)ということになります.
 また,AさんとBさんが,同時にCさんに時間を尋ねてしまうかも知れません.このときCさんは,二人からの言葉が混じって聞こえるため,何を言っているのかわからなくなってしまい,通信が成立しなくなってしまいます.
 混じってしまったものは分離することは非常に困難ですから,混じらないように,つまり同時にしゃべらないようにする必要があります.もしくは,通信が失敗したときには,もう一度送り直す必要があります.

● まとめると
  1. 一人がしゃべれば,全員に伝わる(ブロードキャスト).
  2. 誰から誰に伝えたいのかを言う必要がある.
  3. 二人が同時に喋ると,言いたいことが伝わらない.
これがバス接続型の通信システムの特徴です.これらの利点や欠点を,どのように利用,解決するかはそれぞれのシステムによって異なります.
 人間の場合は,二人が同時にしゃべってしまうと,自分の声と同時にしゃべっている人の声も聞こえます.すると「あ,同時にしゃべってしまった」とわかるので,喋るのをやめます.時間間隔を空けてもう一度しゃべるか,お互い譲り合って「Bさん,お先にどうぞ」といって,しゃべる権利を明示的に相手に渡したりします.
 イーサネットに関しても同様です.イーサネットのケーブルに接続するコンピュータには,イーサネットアドレスと呼ばれるアドレスがあり,それぞれのコンピュータに固有(正確にはイーサネット インターフェースに固有)な番号が割り振られています.
 そして,このアドレスを使ってお互いを特定して通信を行います.
 2つのイーサネット インターフェースが同時に通信を行うと,ケーブル上でメッセージが混じってしまって,正しくメッセージが伝わらなくなってしまうために,誰も通信していないことを確認してから,メッセージの送信を開始します.
 もし,まったく同時に送信を開始してしまって,2つのインターフェースからのメッセージが混信してしまった場合には,混信したことを検出して送信を中止し,もう一度送信を行います.


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