- インターネットの実体
- では,インターネットの実体とはどのようなものなのでしょうか.図5に日本のインターネットの概形を示します.
通常,ユーザーはインターネットプロバイダに電話線(とモデム)という物理層を使って接続します.このとき,データリンク層として,PPPが使われます.
PPPは,これまで出てきたSLIPを拡張したもので,SLIPにはないユーザー認証機能や,データの圧縮機能などがあります.
インターネットプロバイダとしては,アクセスポイントにつないできたユーザーを特定して,課金情報を更新する必要があるため,通常はPPPが使われています.PPPと電話線を経由して,ユーザーのコンピュータとインターネットプロバイダのルータがつながります.
では,プロバイダのルータは,どこにつながっているのでしょうか.実は,別のプロバイダのルータとつながっているのです.プロバイダ同士が直接つながっている場合もありますし,インターネットエクスチェンジ(IX)と呼ばれるプロバイダ同士をつなぐルータがあって,ここにつながっている場合もあります.
インターネットエクスチェンジも,日本にはいくつかあって,NSPIXP1/2/3,JPIXなどが有名です.プロバイダ同士は,通常,複数の経路でつながっています.もし別のプロバイダやインターネットエクスチェンジと1本の回線でしかつながっていないと,その回線に障害が起きて通信ができなくなると,そのプロバイダのユーザーがインターネットと通信できなくなってしまいます.そのため,複数の回線を経由して,複数のプロバイダと相互に接続して,耐故障性を高めています.
ユーザーがプロバイダと接続する方法も,最近は以下のようにいろいろな選択肢が提供されています.
- 従来のアナログ回線とモデム
- ISDN回線とターミナルアダプタを使ってつなぐ方法
- アナログ回線とADSLモデムを使う方法
- ケーブルテレビの同軸ケーブルとケーブルモデムを使う方法(いわゆるCATVインターネット)
- 人工衛星を使う方法(いわゆる衛星インターネット)
- 無線LANを使う方法(いわゆる無線インターネット)
などが実際に使われています.
プロバイダ同士やインターネットエクスチェンジをつなぐ方法にも様々なものがあります.
おもなものとしては,
- NTTのATMネットワークサービスなどを使ってつなぐ方法
- 自社の光ファイバネットワークを使ってつなぐ方法
があります.電力会社系や鉄道事業者系のプロバイダでは,それぞれの本業で使っている光ファイバの余っている部分を使ってインターネットサービスを提供している場合もあります.
このように,インターネットではデータリンク層として機能する多くの種類のインターフェースがネットワーク層によって結合され,全世界的ネットワークが構築されています.
別の見方をすれば,それぞれのデータリンク層をルータを経由して接続して,全世界的ネットワークを作っているということもできます.
〔図4〕ネットワークシステムの層構造
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