秋月電子の店頭の人だかりは他店のそれとはちょっと違っています．他の店にあつまるのが「買いに来た人」だとすると，秋月電子の場合は「宝探しに来た人」とでもいうのでしょうか．店頭の品物一つ一つをじっくりと吟味しています．
　宝物は持ち主が価値を認めて初めて“宝物”となります．だから秋月電子のキットの価値は自作をしない人には絶対に判りません．まして玉石混交の中から「光る玉」を見つけたときの喜びなんて，普通の人には絶対にわからないでしょう．
　ハンダ付けが好きな人にとって最高のキットというのは「玉」よりもおいしいお菓子に似ているのかもしれません．お小遣いを握りしめた子供は，手の中のお金とお店の品物を天秤に掛けて一番のお菓子を探しますが，秋月電子の店頭にいる人たちの雰囲気もこれに良く似ています．秋月電子は電子のお菓子屋！もっと言ってしまえば駄菓子屋です．
　駄菓子屋で一番おいしい物を買う方法をご存知ですか？好みが違いますから友達に聞いてもダメです．大人になんかわかりません．店番の人は「どれでもおいしいよ」と言います．
　自分にあった物を買う方法はただ一つ，お店のお菓子を全部一通り食べてみることでしょう．
　この本の企画が持ち上がったとき，筆者(高木)は小踊りしました．電子のお菓子を好きなだけ食べられるのですから踊らないわけがありません．
　塩味のキット，砂糖漬けのキット，色々な味はお伝えできたと思います．それをおいしいと感じるかどうか，それは皆さんで確認してみて下さい．実は私も思ったよりも好き嫌いがはっきり出ましたが，食わず嫌いだったPICが大好物になると言う思わぬ収穫もありました．
　(以上，筆者　高木 誠利氏のまえがきより)