Last Update 2014/10/07

GHz高周波信号のふるまいと回路の動作をパソコンで体験学習
シミュレーションで始める高周波回路設計

市川 裕一 著
A5判 272ページ
CD-ROM付き
定価3,520円(税込)
JAN9784789830362
2005年3月1日発行
[絶版2009.2.2] シミュレーションで始める高周波回路設計
大変恐縮ですが,こちらの商品は品切れ絶版となりました.
 高周波回路を学ぶにあたっての最大の壁は,部品の入手が難しく,調整・評価に使用する測定器は高価なため,個人レベルでは試作・評価を簡単に行うことができないということがあげられます.
 そこで有効なのが回路シミュレータです.実際に試作評価できない回路でも,パソコンにインストールした回路シミュレータ上でその動作を確認し,特性の調整を行うことができます.
 本書では,回路の基本動作の解説を行うと共に,(株)エム・イー・エルより提供いただいた高周波回路シミュレータ(S-NAP)の機能限定版を用いて,回路の動作を確認できるように構成しています.

目次

第1部 基礎編

第1章 高周波の世界へようこそ!
 広がる高周波システム
 高周波とは
 無線システムの強力な媒体「電波」は高周波システムだけが扱える
 無線システムが電波を利用する理由
 どうして数百M〜GHzの高い周波数を使う?
 高周波システムを構成するために必要なもの
 電波にデータを載せたり電波からデータを取り出す回路
 高周波システムのいろいろ
 無線LAN
 RFID
 キーレス・エントリ・システム
 では,始めましょう!

第2章 周波数が高くなると見えてくる現象
 その1…プリント・パターンが部品のようにふるまう現象
 低周波では信号の波長を無意識に無視している
 1GHzにもなると同じ配線上でも信号のようすがぜんぜん違う
 プリント・パターンは長さと幅によって特性が変わる部品
 その2…信号が反射して戻ってくる現象
 反射はすべての回路で起きる基本現象
 特性インピーダンスの変化点に反射あり
 シミュレーションで確認してみよう!
 その3…コンデンサがコンデンサでなくなる現象
 周波数が高くなるとインダクタに変身する
 実際のコンデンサの正確な等価回路
 50Ω伝送線路に実装してインピーダンスの変化を確認
 その4…インダクタがインダクタでなくなる現象
 周波数が高くなるとコンデンサに変身
 実際のインダクタの等価回路
 50Ω伝送線路に実装してインピーダンスの変化を確認
 その5…抵抗が抵抗でなくなる現象
 周波数が高くなるとインダクタンス成分の影響が現れる
 その6…プリント・パターンの曲がり角で反射する現象
 高周波信号はコーナで曲がりきれずにぶつかる
 プリント・パターンの曲がり角はなめらかに描こう
 その7…プリント基板の電気的特性が無視できなくなる現象
 基板の材質が変わるとプリント・パターンで作る部品の大きさが変わる!
 基板は回路の性能を大きく左右する
  APPENDIX A 単位のお話「dBとdBm」

第3章 伝送線路のふるまい
 「伝送線路」のインピーダンスにどう対応する?
 部品はインピーダンスでOKだけど…
 伝送線路の性質は特性インピーダンスで表す
 特性インピーダンスとは
 直流抵抗とはぜんぜん別のもの
 長さが変わっても値が変わらない
 電力を消費しない
 周波数によらず一定で位相だけ変化する
 特性インピーダンスの性質は伝送線路の構造で決まる
 まずは伝送線路の構造の理解から
 特性インピーダンスを求める式
  Column1 直列のときはインピーダンス,並列のときはアドミタンスで扱う

第4章 スミス・チャートの見方と使い方
 高周波ではインピーダンスを甘く見てはいけない
 高周波ではインピーダンスの周波数変化がとにかく複雑
 インピーダンスと反射波の振幅,位相が一目でわかる「スミス・チャート」
 使い方 その1…インピーダンスが一目でわかる
 値が-∞〜+∞で変化するリアクタンスも表示できる
 チャートの見方
 使い方 その2…50Ωを接続したときの反射量がわかる
 インピーダンスをプロットするときは50Ωで正規化する
 インピーダンス点と中心との距離および
 位相から反射波の情報が得られる
 スミス・チャートを使ってみよう
 周波数1GHz固定のインピーダンスをプロット
 スミス・チャートと反射波の関係
 そのほかの便利なチャート
 並列素子を扱う場合はアドミタンス・チャート
 一番実用的なのはイミタンス・チャート

第5章 電力を100%伝えるインピーダンス整合のシミュレーション
 高周波では電圧や電流は扱わない
 回路の特性は電力で表す
 高周波では安定している「電力」を測定する
 回路の入力と出力の電圧の関係を表すSパラメータ
 高周波回路の特性は入口と出口の四つの電力だけで表せる
 入力波と出力波の関係を定義している
 四つのSパラメータの意味
 実際の高周波デバイスのSパラメータ
 高周波トランジスタ2SC5509のSパラメータ
 データシートから入力電力と出力電力の関係を予測できる
 S11とS22はそのままスミス・チャートにプロットできる
 抵抗,コンデンサ,インダクタのSパラメータ
 51Ω抵抗
 1pFコンデンサ
 4.7nHインダクタ
 反射をなくすテクニック「インピーダンス・マッチング」
 入力インピーダンスが50Ωの回路ならマッチングは簡単
 入力インピーダンスが50Ωでないときはどうする?
 部品の追加によるチャート上のインピーダンス軌跡
 回路Xと直列に挿入する
 回路Xと並列に挿入する
 回路Xと直列に伝送線路(Z0)を挿入
 スミス・チャートを使ったインピーダンス・マッチングの方法
 まず中心を通る円上にもっていく
 マッチングの例
 その1…並列コンデンサ+直列コンデンサ
 その2…並列コンデンサ+直列インダクタ
 その3…直列コンデンサ+並列コンデンサ
 その4…直列コンデンサ+並列インダクタ
 その5…直列50Ω伝送線路+直列コンデンサによるマッチング
 その6…直列50Ω伝送線路+直列インダクタによるマッチング
 実際にマッチング回路を設計するときに知っておくべきこと
 部品間の実装スペースを考慮する
 インピーダンス・マッチング回路には抵抗を使わない
 チャート上の移動量が少ないほど広帯域にできる
 部品の定数は飛び飛びの値しかない
 部品の周波数特性を実測する

第2部 応用編

第6章 LCフィルタのシミュレーション
 フィルタの役割
 フィルタの種類
 高周波フィルタの基礎知識
 CRで作る低周波センスのフィルタは使えない
 CRのフィルタはなぜ高周波で使えないのか?
 フィルタは必要な帯域で整合し不要な帯域は反射するマッチング回路
 計算で得られた定数の部品はほとんど存在しない
 LCによる高周波フィルタのいろいろ
 カットオフ周波数1GHzの定K型LPF
 カットオフ周波数1GHzの定K型HPF
 中心周波数1GHzのLCによるBPF
 LPFとHPFを組み合わせて作る簡単なBPF
 BEF
 伝送線路で作るフィルタ
 集中定数が使えない数GHz以上の超高周波で使う
 ショート・スタブのBPF特性
 オープン・スタブのBEF特性
 実用化にむけてのテクニック&アドバイス
 部品の大きさと接続パターンの影響
 部品の自己共振周波数の影響
 実際の特性により近付ける

第7章 小信号アンプのシミュレーション
 高周波アンプに求められること
 どのくらい増幅する必要があるか?
 入出力がマッチングしていること
 ゲインが大きく反射の小さい増幅素子が使われていること
 雑音が小さいこと
 最大出力レベルが仕様を十分満足すること
 電力の変換効率が高く発熱が小さいこと
 低周波センスの増幅回路は使えない
 なぜ使えない?
 高周波センスのアンプとは
 雑音の大きさを求める方法
 雑音指数の計算式
 雑音指数の計算方法
 算出式
 LNA+損失のある回路のNFの計算例
 初段LNAのNFはできるだけ低く,ゲインはできるだけ高く
 LNAを設計してみよう
 準備
 LNAに使える半導体
 2種類のHEMT
 LNAのゲインやNFを調べてみよう
 マッチングしていない単体での特性
 バイアス回路を追加する
 プリント・パターンを盛り込む
 入出力のマッチングを調整して性能アップ!
 マッチング調整失敗で発振
 低域のゲインを下げて安定化する
 調整後の特性の評価
 実用化にむけてのテクニック&アドバイス
 部品・パターンの情報をシミュレーションに盛り込む
 ショート・スタブで静電気対策
  Column2 反射特性のシミュレーション結果の見方
  Column3 高周波トランジスタのパラメータ入手法とデータ・ファイルの作成

第8章 高周波スイッチのシミュレーション
 高周波スイッチのあらまし
 応用回路例
 プログラマブル・アッテネータ
 移相器
 種類と要件
 種類…電子式が一般的
 要件
 電子式スイッチに使える半導体
 PINダイオード
 MESFET
 スイッチの動作を調べてみよう!
 2種類のSPSTスイッチ
 シリーズ型SPSTの通過特性とアイソレーション特性
 シャント型SPSTの通過特性とアイソレーション特性
 シミュレーション結果の考察
 図8‐17(b)の反射特性が良すぎる
 シリーズ型のOFF時アイソレーションを改善する
 SPDTスイッチを作ってみよう!
 動作説明
 動作確認してみよう
 特性を改善しよう
 ショート・スタブλ/4伝送線路を利用したSPDTスイッチ
 動作説明
 動作確認してみよう
 どっちのSPDTがいいの?
 実用化に向けてのテクニック&アドバイス
 スイッチのドライバ回路

第9章 新しい信号を生み出すミキサの動作
 なぜミキサが必要なの?
 数百MHz以上の高周波を処理するのは大変
 ミキサを使うと周波数の上げ下げが可能になる
 ミキサは二つの信号を掛け合わせる
 信号を加えても新たな周波数成分は生まれない
 信号を掛け合わせると新たな信号が二つ生まれる
 ミキサの出力にはBPFを置いて必要な周波数成分だけを取り出す
 送信回路におけるミキサのアップ・コンバージョン動作
 受信回路におけるミキサのダウン・コンバージョン動作
 ミキサの回路
 パッシブ・ミキサ
 アクティブ・ミキサ
 DBMの基本動作
 状態・:LO信号入力がない
 状態・:LO信号入力の極性が正(+)のとき
 状態・:LO信号入力の極性が負(-)のとき
 どこで新しい周波数成分が生まれるの?
 逆にすればアップ・コンバージョン
 ミキサのすべての入出力はインピーダンス・マッチングさせる
 DBMの応用回路
 BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調器
 実用化にむけてのテクニック&アドバイス
 LO信号パワーをメーカ推奨のレベルに設定する
 ミキサの入出力にアッテネータを挿入してマッチングする

第10章 検波回路のシミュレーション
 アナログ変調とディジタル変調
 アナログ変調
 ディジタル変調
 搬送波の有無を利用した変調方式ASK
 ASKとは…`0'と`1'に合わせて搬送波をON/OFFする変調方式
 ASK変調方式のいろいろとそのふるまい
 乗算器を使ったASK変調の動作をシミュレーションで確認
 ASK復調方式のいろいろとそのふるまい
 ショットキー・バリア・ダイオードを使う
 検波回路を設計してみる
 ASK用検波回路の他の用途
 実用化に向けてのテクニック&アドバイス
 検波出力の処理
  Column4 ディジタル変調のいろいろ

第11章 アンテナのシミュレーション
 アンテナは回路と空間をインターフェースする高周波部品
 アンテナの放射特性を調べる
 アンテナ設計時に重要となるポイント
 空間とマッチングしたアンテナの解析例
 インピーダンスと放射効率
 電流分布と電波が放射されるようす
 プリント・パターンの幅と共振周波数の関係を調べる
 空間とマッチングしていないアンテナの解析例
 形状に手を加えてマッチングするように調整してみる
 部品やプリント・パターンでマッチングさせる例
 チップ部品追加によるマッチング調整例
 チップ・コンデンサはプリント・パターンに置き換えられる
  Column5 dBiとdBd
  Column6 ポートのオフセットの方法


第3部 実践編

  APPENDIX B 付属CD‐ROMに収録されているシミュレータの使用例
  Column7 付属シミュレータに収録されているお役立ちツールのいろいろ
  APPENDIX C 付属CD‐ROMに収録した高周波回路&電磁界シミュレータの概要
  Column8 記事中のシミュレーション回路を試す前に

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