Last Update 2004/06/15

心と行動の科学がわかる 心理学シミュレーション
Delphiでエンジョイプログラミング

岡本 安晴 著
B5変型判 160ページ + カラー口絵4ページ
CD-ROM付き
定価2,640円(税込)
JAN9784789836838
1999年5月1日発行
[絶版2001.4.30] Delphiでエンジョイプログラミング
大変恐縮ですが,こちらの商品は品切れ絶版となりました.

 プログラミングをしている人は,論理的なことが得意な人だと思います.論理的,あるいは科学的なことと対照的なことして人間的なことが思い浮かぶのではと思います.
 本書では,人間的なことを科学的に扱う心理学からいくつかの話題を選んでプログラミングの材料にしたものを紹介しました.Windowsでのプログラミングを楽しみながら心理学に親しんで頂ければと思います.
 本書の構成は,以下のようになっていますが,どの章でも興味のあるところから読んでいって下さい.
 第1章と第2章は,社会的な現象のシミュレーションです.意見などの支持者の勢力がどのように変化していくのか,簡単なモデルを使って調べてみます.第1章は,数だけを考えた場合,第2章は数に加えて意見に対する評価の要因も考慮した場合です.
 第3章と第4章は,学習のシミュレーションです.第3章は,PDP(Parallel Distributed Processing)と呼ばれているものです.これは目的関数を設定してそれに行動が近づくように考えられたモデルです.第4章のモデルは,Hebbタイプと呼ばれているもので,目的関数は設定せずに,よく使われる神経結合が強化されるとして学習の成立を説明するものです.
 第5章から第9章までは,知覚心理学と呼ばれている領域からの話題です.
 第5章は,錯視と呼ばれている現象についてです.いくつかの有名な錯視図形を画面上に描画して,錯視量の測定をします.「見え」の世界が物理的に正しい世界とは同じものではないことを確認して下さい.
 「見え」の世界は,網膜上に与えられた刺激(情報)などを使って心の世界に構成されたものです.この構成という作業は立体視という現象でも確認することができます.第6章では,この立体視の現象を扱います.
 第7章は,刺激の入力が差動結合(Differential Coupling)になっているという現象を扱います.差動結合のため,物理的な刺激の強さがそのまま感覚の強さとはならず,刺激の強さの変化が感覚情報として意味があるとする考え方です.変化が分からないほど隣り合う刺激の差を小さくしておくと,離れた領域にある物理的に同じ強さの刺激が異なったものとして感じられるという図形を描画します.
 第8章は,刺激の強さの差がどの程度あればその違いが分かるのか,違いが知覚されるための最小の差を求める方法の紹介です.UpDown法などと呼ばれている方法ですが,これは実験でコンピュータが使えるようになって実用的なものとなりました.
 第9章は,知覚における感覚と判断の問題について紹介します.信号検出理論(SDT,Signal Detection Theory)と呼ばれているものに基づく実験ですが,データの分析を画面上に表示されたグラフを見ながらインタラクティブ行う方法を試みました.
 本書でのプログラムは,Delphiで開発したものです.Delphiのコンポーネントを利用すればWindowsでのグラフィカル・ユーザ・インターフェースが簡単に扱えるからです.Delphiでの使用言語はObject Pascalですので,初心者でも使いやすいという利点もあります.もちろん,Object Pascalは初心者のためだけの言語ではなく,実用上も高機能なものです.
 Pascal,あるいはDelphiが初めての人は,拙著「Delphiプログラミング入門」(CQ出版社,1997)など,解説書が多く出版されていますのでそれらを見て下さい.

目次

第1章 意見の分布の推移(数の論理)
- 人の意見が,周囲の多数意見だけで決まる場合 -
1.1 意見
1.2 意見の分布のモデル
1.3 フォームの作成
1.4 プログラムの解説

第2章 意見の分布の推移(知と数の論理)
- 人の意見が,多数意見,意見の価値,意見間の距離で決まる場合 -
2.1 Norm-Information-Distance(NID)モデル
2.2 NIDモデルの考え方
2.3 プログラムの解説とシミュレーション
● 3つのユニット
● フォームの作成
● 意見の支持者の分布の変化
● 意見の支持者の分布の変化をシミュレーション
● 意見の分布の推移
● 意見の分布の推移をシミュレーション

第3章 ニューラルネットPDP(Parallel Distributed Processing)
- 知性の誕生?神経細胞の働きをシミュレーション -
3.1 ニューラルネットPDP(Parallel Distributed Processing)モデルとは
3.2 誤差逆伝播法
3.3 プログラムの解説
● 各フォームと各ユニットの関係
● PDPモデルはクラスで構成
● 学習パターンの設定
● 学習の開始
● 弁別テスト

第4章 Hebb型のニューラルモデル
- 刺激が学習の鍵?神経細胞の働きをシミュレーション -
4.1 Hebb型のニューラルモデルとは
4.2 Klopfのモデル
4.3 プログラムの解説
● 古典的条件付け
● Klopfのモデルはクラスで構成
● 各ユニットの関係と各フォーム
● プログラムの実行

第5章 錯視
- 目の錯覚を測定してみよう -
5.1 錯視とは
5.2 Muller-Lyerの図形
5.3 Ponzoの図形
5.4 Ebbinghausの図形

第6章 立体視
- 立体視を生じる平面図形をプログラムで作ってみよう -
6.1 両眼視差
6.2 プログラムの解説
● メニューの作成
● ランダムドットの図形(メニュー:Dots)
● 四面体(メニュー:Tetra)

第7章 差動結合
- 物理的な明るさの変化が明るさの見え方を決定する -
7.1 Differential Coupling(差動結合)とは
7.2 Differential Couplingを示す例(その1)
7.3 Differential Couplingを示す例(その2)

第8章 弁別閾
- 明るさの違いを判断できる最小差を調べてみよう -
8.1 Up-Down法
8.2 実験データの収集
8.3 実験データの表示

第9章 信号検出理論(SDT:Signal Detection Theory)
- 不確かな2つの刺激の差に対する鋭敏さを考えてみよう -
9.1 2種類の刺激の弁別
9.2 信号検出理論
9.3 実験データの収集
9.4 実験データの分析

Appendix ユニットの作成について

参考・引用文献
索引
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