第2章 ブラウン管の基礎知識

 オシロスコープは、ブラウン管を使用して電圧の変化を時間を追って私たちの目に見えるようにして、その大きさや時間的に変化していく様子を測ることを目的にした波形測定器です。ここではブラウン管の内部の電極構造と個々の機能について説明しています。

■ブラウン管の種類

 オシロスコープに用いられているブラウン管は静電偏向形で、テレビジョンに用いられている電磁偏向形と原理的には同じですが、電子銃から発射された電子ビームの偏向方法が異なります。

■電磁偏向形ブラウン管

 電磁偏向形は偏向角度が大きくとれるので蛍光面が広く、テレビジョン用のブラウン管として適していますが、高い周波数には対応できないのでオシロスコープにはほとんど使用されません。

■静電偏向形ブラウン管

 静電偏向形は偏向角度が電磁偏向形のブラウン管より小さいため、ブラウン管の蛍光面サイズも75 mmから150 mm位までが実用サイズです。しかし、この静電偏向形は高い周波数にも対応しオシロスコープに適しています。

■静電偏向形ブラウン管の構造

 静電偏向形ブラウン管は胴回りがスリムなボトル・タイプの形状で、その底面が蛍光面、胴体部分がコーン部、首に近い部分がネック部と呼ばれています。

 蛍光面は長方形が主流で、注ぎ口に相当する部分には電気回路へ接続するピンが付いています。

 その内部構造は、電子銃部(ガン)、偏向部(ヨーク)、蛍光面(スクリーン)の三つの部分で構成されています。これらをボトル・タイプのガラスの容器に納め、その内部を高い真空状態に保つことで、電子が飛び出し易い空間を形成しています。

  

  

電子銃部(ガン)

 これは蛍光面に細く集束された電子ビームを高速度で衝突させるための電極部分です。通常はガン(Gun:銃の意味)と呼び、電子を発射することに由来してネーミングされたようです。電子銃部は、以下の電極により構成されています

カソード
制御グリッド
第2グリッド
第1陽極
第2陽極
後段加速電極

偏向部(ヨーク)

 カソードから放射された電子ビームを上下左右に動かし観測する信号の波形を描く働きをするのが電子銃部と蛍光面の間にある偏向部です。

ブラウン管の偏向部
偏向板の構造
偏向板の機能
偏向感度

蛍光面(スクリーン)

 波形が描かれる部分で、長方形で、対角寸法は130 mm〜150 mmが一般的です。透明なガラス材の内側に蛍光物質が均一に塗布してあり、発光色、輝度、残光時間など用途によって使い分けられています。

残光時間
目盛


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