1章 インターフェア調査と対策

1-4 インターフェア調査と対策

 インターフェアはいろいろなものに影響を与えます.田中さん宅で障害を受けそうな機器は,TV,オーディオ,電話ですので順番に調べます.

 まずはTVからです.アンテナは共聴で各棟に一組み,スタックになったものが屋上に上がっています.18MHzから24MHzまで順番に10WでCWを出して,XYLに画面の前に座ってもらってチェックします(図1−9).すべてのチャネルで画面を食い入るように調べ,色の変化,縞模様の有無を調べます.幸いなんの変化もありませんでした.

(図1-9)インターフェアのチェック

 

 

 次に50WにQROして調べます.TVIの調査は10Wの時と同じ.今度も問題ありませんでしたが,ミニコンポや電話も調査対象に拡げます.

 ミニコンポのスイッチを入れ,50Wで送信します.残念ながら不要な信号が入っているようです.CWで送信するたびにスピーカーからボコブーボコブーと音がします.CDやテープ,FMと切り替えても状態は変わりません.スピーカー・ラインが怪しいので,フェライト・バー(図1−10,LIB3−(5))を入れてみます.半分くらいの強さになりましたが完全に消えてはいません.

(図1-10)フェライト・バーによるコモンモード・フィルター

 そこでリグのAC電源とミニコンポの電源のコンセントにそれぞれ市販のノイズ・フィルター(図1−11)を取り付けてみました.うまくコモンモード・ループを断ち切ることができたようで,障害はなくなりました.

(図1-11)

市販のノイズ・フィルター

 電話もチェックしてみます.117の時報を聞きながら送信します.少しだけ,CWにあわせてカツカツ音がします.ミニコンポのスピーカーと同じフェライト・バーによる対策を電話線に施します.これもうまく動作し,CWを叩いてもなんの妨害も入りません.

 次からが問題です.ご近所に聞いて回るのですが,基本波による障害が自宅に出ていたので,上下左右の至近のお宅にも自宅よりは小さいけれど同じようなものが出ている可能性はあります.まず,フェライト・バー10本ほどとプラスチック結束バンドを買いだめし,市販のノイズ・フィルターも数個用意しておきます.ある日曜日のお昼前,菓子折を持って上の階のお宅を伺いました.

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−−(田中) 下の階に住んでいる田中ですけれど,趣味でアマチュア無線をやっていまして,郵政省の指導でわたしが出す電波が原因の電波障害がないかどうかの調査をしています.テレビや電話に縞模様や雑音は入りませんか?

「え?縞模様や雑音ですか…気が付かなかったなぁ.何時頃ですか?」

−−夜の10時頃が多いですが

「う〜ん.わかりません」

−−よろしければ,テストさせていただけませんか?こちらからお電話を差し上げて,電波を出しながら確認させていただけると確実なのですが.

「あ,はい.いいですよ.電話番号は××××−○○○○です」

−それでは,今から5分後にお電話しますのでよろしくお願いいたします(図1−12)

(図1-12)

電話を使っての電波障害調査

−−もしもし,先ほどの田中ですがよろしくお願いします.

「はい.」

−−今,モールス信号を送信しているのですが,電話の音にコツコツといった雑音は入っていますか?

「入っていません」

−−ラジカセにCDをかけていただけますか?

「はい」

−−じゃ今度は,先ほどと違って音声で送信します.「本日は晴天なり,本日は晴天なり」……いかがですか? モガモガいってませんか?

「いえ,何も出ません.」

−−そうですか,どうもお手数をおかけしました.取りあえず障害はないようです.まれに部屋の模様替えで機器の位置を変えると出ることがありますので,もしそのようなことがありましたら遠慮なくおっしゃってください.

「はい,TVやラジカセに入ったら連絡すればいいんですね,わかりました」

−−はい,よろしくお願いします.

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 上の階のお宅には障害は出ていないようでした.ほかのお宅も同様にして調べましたが,幸いにもインターフェアは,出ていませんでした.


Copyright 2000 原岡 充

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