1章 アンテナの自作を楽しもう

 多くの分野に細分化されてしまったとはいえ,いまだアマチュア無線の最大の楽しみは,自分の作った物で見知らぬ世界の人々と,電波を通じて意思が通じ合えることではないでしょうか?

 ハムの黎明期 (40年ほど前) には,市販の機器がほとんどなかったため,無線機やアンテナなどの必要な機器を,コツコツと部品を集めながら大変な苦労をかけて,先達方は自分の手で作っていました.

 今から見ると,「物が少ない時代」に,知恵と努力でアマチュア無線を楽しんでいたと言えるでしょう.言い換えれば電波を出すためには,自作することが絶対条件の時代でした.

 20〜30年ほど前になると,多数の機器が市販されるようになりましたが,まだまだ完成度が低いため,少し手間をかけて作れば,性能的にも同等または優れた物が作れました.筆者もこの時代に写真1のような市販品にあまりない移動用のHF無線機や,無線機のジャンクを写真2写真3のように改造して,多くの方々とのQSOを楽しみました.

(写真1) 

7MHz 2W移動用SSBトランシーバー.当時,輸出CB無線用のSSB用のクリスタル・フィルターが安価な価格で放出されたので格安で製作できた

 

(写真2) 

ジャンクで作った29MHz FMトランシーバー.ジャンクの輸出用27MHz AMトランシーバー基板を改造してトランシーバーとした.当時は,メーカー製無線機でFMに対応した物がほとんどなかったので,自作しないとFMには出られなかった

 

 

(写真3)

業務用無線機を使った430MHzパワー・アンプ.400MHzの業務用無線機のケースとファイナル部を使ってハンディ機用のブースターを作った.必要な部品を無線機から取り外し,ケースもそのまま使ったので丸一日プラス0円で完成

 多少の手間をかけて自作しても,十分なメリットがあった時代で,市販品と比較することが楽しい時代でした.しかし,成熟期に入った今日では,市販品の完成度が飛躍的に向上し,自作しても性能的に太刀打ちできなくなり,物を作ることに対する意義も薄れてきているのも確かです.

 追い討ちをかけるように,価格的に見ても,自作するほうが高くつくことがあります.特に電子機器である無線機においては,その格差は顕著です.


Copyright 2001 JH5MNL 田中 宏

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