1章 手軽にアンテナを作ろう

しかし,作りたい

 今日では自作することは,電波を出すための絶対条件ではなくなりました.本音を言えば市販の商品を購入したほうが,より一層遠くへ電波を届けることができるのです.

 ごく一部の分野ですが,市販品が氾濫している今日,不思議なことに休日を利用して,手作りパソコンや日曜大工,ガーデニングなどの手作りを楽しんでいる方が増えてきていることも確かです.しかし,昔と異なるところは,時間や手間を必要以上にかけず,手軽に成果が現れる分野に人気が集中しています.

 アマチュア無線においても,色々な物を作りながら成果を確認するためQSOをし,色々な方々から意見を求め,問題点があればさらに改良を進めることを楽しんでいる方は少なくありません.しかし,今までは物を作ってから成果を確認するまでの道のりが遠すぎるため,手軽に手作りを楽しむことができませんでした.

手軽にアンテナを作ろう

 アマチュア無線で自作といっても,数多くの分野があります.その中でも簡単に成果が現れる物として,昔からアンテナの自作があげられ,一見すると,構造が比較的単純なため作るのも簡単で,電波の飛びという形で簡単に成果を確認することができます.しかし,市販品と同じような物を作るとなると,材料の入手や加工に想像以上に苦労し,価格的に見ても高価になる場合があるため,相当の覚悟が必要となります.

 そこで,本書では簡単・安価に製作できるように,材料と構造を見直し,現代風に思い切ってアレンジすることにしました.材料一つを見ても,写真4写真5写真6のように木材や,物干し竿などホーム・センターで手軽に入手できるものが多数登場します.

(写真4)

一見すると普通の八木(144MHz & 430MHz)に見えるが,ブームが木材,エレメントが針金で作られている.唯一の欠点は表面が光らない 

 

(写真5)

ブームに物干し竿,エレメントに園芸用のパイプを使った50MHzの八木アンテナ.マッチング回路を単純化することで製作が容易に

 

(写真6)

材料と構造を工夫して,製作と調整を容易にした144MHzコーリニア・アンテナ.無指向性でもゲインを向上させることができるので,電波の飛びも改善できる

 構造についても従来あまり使われることのなかった写真7写真8写真9のような方法により,短時間で製作できるので休日のひと時を有効に活用できます.一番大切な,完成した時の成果も,期待を裏切らないように十分に吟味しました.

 

(写真7)

エレメント(針金)とブーム(木材)を釘で固定する.従来の固定方法と比べて,製作の手間を大きく省くことができるようになった

 

(写真8)

再現性の高いトラップ・コイル.自作が難しいとされていたが使用する材料を工夫

 

(写真9)

コーリニア・アンテナの製作で一番難しい,位相エレメントの処理に薄いプラスチックの板を使った


Copyright 2001 JH5MNL 田中 宏

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