マイクロストリップ・ラインの基礎からミキサ設計まで
マイクロウェーブ技術入門講座
[基礎編]
森 栄二 著
A5判 456ページ
定価3,960円(税込)
JAN9784789830409
2003年12月15日発行
大変恐縮ですが,こちらの商品は品切れ絶版となりました.
マイクロウェーブ帯の回路は,マイクロストリップ・ラインなどの分布定数素子を使って作ることが多く,できあがった回路はなんとも奇妙な形をしています.奇妙な形の一つ一つにはそれぞれ意味があり,それらは回路として機能しているのですが,その独特の形状ゆえに,マイクロ波の世界に慣れていない方にとっては難しいものとなっているようです.
本書では,数百MHz〜数GHz帯の高周波におけるさまざまな基本回路/応用回路の設計方法を,コンピュータによるシミュレーション結果と実際に試作した回路の実測特性を示しながら,具体的に解説していきます.回路の特性インピーダンス,デバイスのSパラメータ,スミス・チャートの利用など,マイクロウェーブ帯の回路設計で必須となる基礎知識も,具体的な回路とそのパターン・レイアウト例を参考にすることで自然と身につきます.
本書は,月刊「トランジスタ技術」誌の1998年3月号〜2000年10月号の連載記事「マイクロウェーブ技術入門講座」をもとにして,応用回路やその設計方法,実際の製作事例などを加筆して再編集したものです.
目次
第1章 マイクロウェーブの世界
1-1 マイクロ波帯の回路を構成する要素
マイクロ波帯の伝送線路
マイクロウェーブの回路もパーツの集まり
マイクロ波でよく使う同軸コネクタ
よく使われるdBmとは何か
1-2 マイクロ波帯の測定とコンポーネント
マイクロ波帯の測定器
アイソレータの特性
同軸型帯域通過フィルタの特性
その他のマイクロ波用コンポーネント
ユニバーサル・テスト・フィクスチャ(UTF)
1-3 マイクロ波帯の特性と用語
分布定数と特性インピーダンス
反射係数とVSWR
理想線路(ideal line)の特性と電気長
理想ラインを用いた信号の合成シミュレーション
特性インピーダンス50Ωのラインを並列に2個接続すると特性インピーダンスは25Ωか
1-4 分布定数と集中定数の境界
第2章 マイクロストリップ・ラインの基礎
2-1 マイクロストリップ・ラインの設計と製作
マイクロストリップ・ラインと同軸線路
マイクロストリップ・ラインを設計する
マイクロストリップ・ラインの特性インピーダンスの計算
マイクロストリップ・ラインを作る
実際のマイクロストリップ・ライン
2-2 マイクロストリップ・ライン上の電界と磁界
マイクロストリップ・ラインの電磁界分布
基板上を移動する信号の速度
2-3 実効比誘電率を求める
マイクロストリップ・ラインの実効比誘電率
比誘電率の周波数特性
基板の比誘電率
特性インピーダンスの周波数特性
計算したマイクロストリップ・ラインの特性インピーダンスは正しいか
第3章 マイクロストリップ・ライン素子
3-1 1ポートのマイクロストリップ・コンポーネント
マイクロストリップ・ライン・サブストレート(MSUB)
マイクロストリップ・ライン・ショート(MLSC)
マイクロストリップ・ライン・オープン(MLOC/MLEF)
3-2 複数ポートのマイクロストリップ・コンポーネント
マイクロストリップ・ティー・ジャンクション(MTEE)
マイクロストリップ・ライン・ステップ(MSTEP)
マイクロストリップ・クロス・ジャンクション(MCROS)
3-3 スリットとギャップ
マイクロストリップ・ライン・スリット(MSLIT)
マイクロストリップ・ライン・ギャップ(MGAP)
3-4 カーブやコーナーとベンド
マイクロストリップ・ライン・カーブ(MCURVE)
マイクロストリップ・ライン・コーナー(MCORN)
マイクロストリップ・ライン・ベンド(MBEND)
第4章 アッテネータの効果と設計法
4-1 インピーダンスと測定
インピーダンスを正しく規定する必要性
従来型アッテネータ
従来型アッテネータのポート・インピーダンス
T形アッテネータ
π形アッテネータ
4-2 正規化アッテネータの設計値
正規化アッテネータの抵抗値
50Ω系アッテネータの設計値
アッテネータの製作と特性評価
4-3 アッテネータの応用
インピーダンス・コンバータ
T形/π形インピーダンス・コンバータ
π形インピーダンス・コンバータの設計値
5GHz以上の周波数まで動作するステップ・アッテネータ
コラム マイクロ波でよく使う薄膜アッテネータ
第5章 Sパラメータの基礎とその計算方法
5-1 マイクロ波回路とSパラメータ
1ポート回路のSパラメータ
5-2 スミス・チャートと極座標
スミス・チャートを描いてみる
アドミタンス・チャート
イミッタンス・チャート
スケールの違うスミス・チャートとアドミタンス・チャート
5-3 スミス・チャートを使う
スミス・チャート上のインピーダンス
等価回路
5-4 2ポート回路とSパラメータ
いろいろなパラメータ
Sパラメータを使う理由
2ポート回路のSパラメータ
相反回路と無損失回路
Tパラメータ(トランスファ・パラメータ)
2ポート回路の縦続接続の計算
Sパラメータと他のパラメータの関係
代表的な回路のSパラメータ
5-5 シグナル・フロー・グラフを使ってSパラメータの計算を行う
簡単な回路のシグナル・フロー・グラフ
メーソンの法則(Mason's rule)
第6章 Sパラメータの測定と整合回路の設計
6-1 Sパラメータを測定するために
紙フェノール基板の比誘電率
チップ抵抗のSパラメータの測定
線路の先に接続されたデバイスの特性
コラム Touchstone形式のデータ
測定面(ポートの位置)を移動する
デバイスまでの電気的長さ
コネクタ部,マイクロストリップ・ライン部の電気的長さ
もう一つの誤差
測定のための治具(フィクスチャ)に求められる性能
同軸ケーブルの先に取り付けたチップ抵抗
6-2 いろいろなデバイスのSパラメータ
同軸ショート
同軸オープン
チップ抵抗
面実装タイプのFETやトランジスタ
コラム プログラマブル電源
6-3 スミス・チャート上のインピーダンス
スミス・チャート上の抵抗
スミス・チャート上のキャパシタ
スミス・チャート上のインダクタ
6-4 LCマッチング回路
インピーダンスにキャパシタを直列接続
インピーダンスにインダクタを直列接続
インピーダンスにキャパシタを並列接続
インピーダンスにインダクタを並列接続
スミス・チャート上での軌跡
Γ平面
50Ωに整合する
50Ωにマッチング可能なインピーダンス
25Ωと四つの基本回路の軌跡
スミス・チャート上の四つのエリア
6-5 実際に整合回路を設計する
Simultaneous Conjugate Match
第7章 信号分配器と信号合成器の設計
7-1 抵抗を用いた信号分配器
抵抗を用いた信号分配器の試作とシミュレーション
抵抗で消費される無駄な電力
パワー・ディバイダに求められる性能
抵抗を用いたパワー・スプリッタの利点と欠点
7-2 ウィルキンソン・パワー・ディバイダ
ウィルキンソン・パワー・ディバイダの設計
ウィルキンソン・パワー・ディバイダの特性
試作した分配器の特性と分配器のアイソレーション
7-3 他の伝送線路を用いたウィルキンソン・パワー・ディバイダ
2分配ウィルキンソン・パワー・ディバイダの広帯域化
2段ウィルキンソン・パワー・ディバイダの試作
標準の2分配ウィルキンソン・パワー・ディバイダのレイアウト
2段2分配ウィルキンソン・パワー・ディバイダのレイアウト
コラム 多段ウィルキンソン・パワー・ディバイダの設計値
3段2分配ウィルキンソン・パワー・ディバイダのレイアウト
分配器を3個使った4分配分配器
4分配ディバイダ
共通ポートの反射特性帯域幅を改善したウィルキンソン型分配器
7-4 等分配でないウィルキンソン型分配器
非補償型不均等分配ウィルキンソン・カップラ
(Uncompensated Unequal-Power-Split Wilkinson Coupler)
2:1の分配比をもつウィルキンソン・パワー・ディバイダの設計
非補償型不均等分配分配器の各種レイアウト
補償型不均等分配ウィルキンソン・カップラ
(Compensated Unequal-Power-Split Wilkinson Coupler)
不均等分配分配器と3dB分配器を組み合わせた分配器
7-5 無損失集中定数2分配器
無損失多段集中定数分配器
無損失集中定数3分配器
無損失集中定数4分配器
不均等分配の無損失集中定数2分配器
第8章 ブランチライン・カップラの設計と応用
8-1 ブランチライン・カップラの基礎
3dBブランチライン・カップラの設計方法
ガラス・エポキシ基板での試作
2.0GHz用3dBブランチライン・カップラのレイアウト
3dB以外のブランチライン・カップラ
0dBカップラ
8-2 ブランチライン・カップラを使ってVSWRを測定する
インピーダンスをより高精度に測定するために必要なこと
PINダイオードを使ったアプリケーション
8-3 3ブランチ型ブランチライン・カップラ
3ブランチのブランチライン3dBカップラ
ガラス・エポキシ基板上での試作
3dB以外の3ブランチ型ブランチライン・カップラ
3ブランチの0dBブランチライン・カップラ
8-4 ブランチライン・カップラを使ったアンプと可変位相器
ブランチライン・カップラを使ったアンプ
ブランチライン・カップラを使った可変位相器
8-5 集中定数素子を使ったブランチライン
3dB集中定数ブランチライン
0dB集中定数ブランチライン・カップラ
3ブランチ集中定数3dBブランチライン・カップラ
低い周波数で動作できる可変位相器
出力差をもつ集中定数ブランチライン・カップラ
より低い周波数で実現する集中定数ブランチライン・カップラ
第9章 ラットレース回路の設計と応用
9-1 1.5λ型ラットレース・ハイブリッド
1.5λ型3dBラットレース・ハイブリッド
各種3dBラットレース・ハイブリッドのレイアウト
9-2 3.5λ型ラットレース・ハイブリッド
9-3 3dB以外のラットレース・ハイブリッド
不均等分配ラットレース・ハイブリッドの問題点
結合線路を使ったラットレース・ハイブリッドの広帯域化
結合線路を使ったラットレースの問題点
λ/4のラインを接続する広帯域化手法
9-4 集中定数ラットレース回路
9-5 ラットレース・ハイブリッドの応用
第10章 ミキサと各種バラン
10-1 ミキサの原理
周波数軸から見たミキサの動作
周波数変換器(ミキサ)を実現するには
簡単なミキサ
アナログ・スイッチを使ったミキサ
シングル・トランジスタ・ミキサ
トランジスタ・ミキサのグレードアップ 381
FETを使ったミキサ
性能の良いFETミキサを作るには
10-2 ダイオードを使用したミキサ回路
シングル・ダイオード・ミキサ
アンチパラレル・ダイオード・ミキサ
シングル・バランスド・ダイオード・ミキサ
簡易バランを使ったシングル・バランスド・ミキサ
結合線路をバランとして使ったシングル・バランスド・ミキサ
ダブル・シングル・バランスド・ミキサ
ダブル・バランスド・ミキサ
ダブル・ダブル・バランスド・ミキサ
スター・ミキサ
ダブル・スター・ミキサ
10-3 バランの基礎
トランスによるバラン
ラットレース・バランを使ったシングル・バランスド・ミキサ
ラットレース回路を使ったダブル・バランスド・ミキサ
ブランチライン・シングル・バランスド・ミキサ
簡単なマイクロストリップ・バラン
パラレル・プレート(平行平板)バラン
マーシャント・バラン
結合線路バラン
コプレーナ線路を使ったバラン
10-4 集中定数によるバラン
簡易LCバランを使ったシングル・バランスド・ミキサ
LCによる集中定数バラン
簡素化した集中定数バラン