――MATLABを利用して,どのように連成シミュレーションを実現しているのですか?
梅田氏:すべてのモデルがMATLAB上で動作しているわけではありません.共通部分の環境としてMATLABを使用していますが,設計の個々の部分については,使用するシミュレータを入れ替えています.このようなシミュレータには,自社で作成したプログラムもありますし,市販シミュレータもあります.
市販シミュレータについては,MATLABがいろいろなツールとのインターフェースを用意しています.例えば,回路シミュレーションにはサイバネットシステムが取り扱っているOrCAD PSpiceを,モータまわりの電磁界解析には日本総研ソリューションズのJMAGを主に利用しています.
シミュレータを内製しているのは,制御ソフトウェアの部分です.これについては,MATLABとの間のインターフェースも自社で作っています.
――連成シミュレーションは,メカトロニクス機器の開発において,どのような問題を解決してくれるのでしょう.
梅田氏:従来のシミュレーションはどちらかというと,振る舞いを再現することで,制御面での対策を早めに行うことが目的でした.現在は,ハードウェア開発の信頼性向上を目的に,シミュレーションを行っています.
安川電機はロボットのイメージがあるかもしれませんが,サーボモータなどのコンポーネントを提供するメーカでもあります.サーボ・ドライバやサーボ・モータなどのコンポーネントを提供するメーカです.こうした製品は,顧客の要求に柔軟に対応できるコンポーネントに仕上げなくてはなりません.そこで,多様な条件でこれらをテストする必要があるわけですが,これらのすべてを実際のシステムを組んでテストすることは不可能です(図2).
図2 ロボット用連成シミュレータ
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ハードウェアの設計では,通常,CAE(Computer Aided Engineering)と呼ばれる解析ツールで評価を行ってから設計します.その場合,制約条件をおおよそ固定して,いくつかの想定に基づいて設計しますが,実際には動作のパターンが異なっていたり,短い動作の繰り返しパターンが発生したりするなど,通常の解析ツールでは制約条件を設定しにくい局面も出てきます.このような場合に,連成シミュレーションによって,電流の負荷の変化などを加味した制約条件を導入することで,解析の精度を上げ,信頼性の向上につなげたいと考えています.