背景と目的―オブジェクト指向の導入ですべてうまくいくわけではない!

 「オブジェクト指向で製品開発を行う」というと,どういうわけか必ず“オブジェクト指向”という言葉だけが一人歩きを始める.とくにソフトウェア開発に携わる人々にとって,“オブジェクト指向”という言葉は,どうしてこんなにも魅力的に聞こえるのだろうか?

 “オブジェクト指向”という言葉の響きはたしかに先進的なイメージを与え,アカデミックな,クレバーな,難しそうなという,とても漠然とした好印象をもたらしてくれる.もっというと,オブジェクト指向による具体的な事実を何も確認していないのに,たとえば「“オブジェクト指向技術”を使ってソフトウェア開発を進めれば革新的に自分たちの扱っているコードがわかりやすくなるだろう」とか,「再利用しやすくなって開発効率が大きく改善されるだろう」といった求めているすべてのことがかなうような気分にさせてくれる.

 逆に,“オブジェクト指向”という言葉の響きは,比較的定性的かつ不確実な印象をも与えるので(単語そのものが抽象的ということもあろうが),その言葉の聞き手(第三者)としては,各人のスキルに応じて勝手な解釈を始めてしまうような気がする.

 したがって,ある人は経験的に「オブジェクト指向と名の付くものは成功した試しがない」と言うし,「そんな余裕はない」とあきらめる人もいるだろう.

 さらには,「ソフトウェア工学でしょ? 構造化手法のときはけっこうたいへんでしたよ.“オブジェクト指向”といってもそう変わらないでしょう」と言う人さえいる.



◆ 背景と目的――オブジェクト指向の導入ですべてうまくいくわけではない!
◆ 構造化手法とオブジェクト指向
◆ オブジェクト指向を導入するに至るもっとも大きな動機とは?
◆ 組み込みシステム開発におけるハード/ソフトのライフサイクル
◆ はじめてオブジェクト指向に挑戦するとき注意すること
◆ 組み込み型システムの制御ソフトウェアとオブジェクト指向開発

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Copyright 2001 杉浦 英樹