コンピュータにより可能になった新たな科学/工学分野
特集 基礎からの計算科学・工学――シミュレーション
コンピュータの役割は,ますます重要になってきている.ビジネスなどにおける実務計算,エンジニアリングにおける制御などのほかに,コンピュータには,新たな,そして重要な役割がある.それが「シミュレーション」である.
コンピュータとはいうなれば「すべてを模式的に実現する装置」であり,コンピュータの用途としてのシミュレーションは,あらゆる分野において重要な役割を果たしている.実際に物を作り,測定器をつながなくても結果が見える,観測が難しいものでも結果を予測することができるなど,科学・工学分野に多大な利益をもたらしている.
シミュレーションにとって重要なのは,対象のモデリングであり,そして正確なモデリングとは,対象の理解そのものでもある.よって,使い方を間違えると,当然間違った結果しかもたらさないので,細心の注意が必要である.したがって,シミュレーションは便利ではあるが,シミュレーションを信用しすぎるのも危険である.
本特集では,シミュレーション(モデリング)の考え方や手法と実際を紹介・解説する.
第1章 コンピュータとは? 計算とは? シミュレーションとは?
世界を僕のマシンの上に 菊池 誠
第2章 シミュレーションの概要を理解する
コンピュータシミュレーションをしよう 菊池 誠
第3章 シミュレーションの結果は本当に正しいものなのか?
物理シミュレーションの手法と結果の検証 牧野淳一郎
第4章 さまざまな種類のシミュレーションが必要とされる
回路シミュレーションの実際 吉田たけお
第5章 音声発生過程のモデリングとそれを応用した解析法
信号処理におけるモデリングの例 三上直樹
第6章 ツールの使いこなし方と組み合わせが決め手となる
制御シミュレーションの実際 川谷亮治
第7章 時間的に不連続なものをシミュレーションする
離散系シミュレーションの実際 梅田茂樹
Appendix フリーの数値解析ツール
Octaveの概要と使い方 松田七美男
|