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810追加情報

これが810ホイットニ
FIC製ホイットニメインボード CW31
DFI製・・・スロット1 810メインボードの快感


はじめに
 情報だけが先に走っている810ですが,ようやく来週帰国後にはテストできそうです.しかも,スロット1タイプでもテストできるので,BXとの性能評価ができます.こんなにうれしいことはありません.各企業台湾本社を訪ねての情報をお届けします.全部をじっくり読んでください.

Tekram
 Tekram社はソケット370を搭載した810メインボードをリリースします.
 ベビーATの製品もリリースする予定のようで,もしATが出れば,簡単に既存ユーザーもアップグレードできるでしょう.
 特徴的なのは,無印810製品と810-DC100製品の両方がリリースされることです.無印810と810-DC100の違いは,先の810解説を読んでください.ただ,一般のメーカーが810と読んでいるのは810-DC100の3Dディスプレイキャッシュを4MB搭載した方です.無印810は,810-DC100よりも安いので,より低価格にマシンを作ることができます.特に無印810でサウンドチップも別途オンボードでなければ,810のサウンド機能を使うので,CPUの負荷は多くなりそうですが,このあたりはCeleron366あたりで実用的かどうかテストしてみたいです.写真は無印810搭載のS381-Mです.

s381-m001.jpg (23540 バイト)

 

DFI
 インテル社の810デモボードを作成しているのがDFI社です.そのこともあるのか,今回スロット1搭載タイプもいち早くリリースできるとのことで,非常にジュリアスも期待しています.http://sog.s-one.net.sg/main.htmでも紹介されています.
 というわけで,スロット1タイプのラインは次のようになっています.

PW65-D Slot 1; Intel 810 DC 100 chipset with 4MB display memory; AC '97 audio; 5 PCI slots
PW65-S Slot 1; Intel 810 chipset with share memory; AC '97 audio; 5 PCI slots


 また,PW65の仕様にはPentium3サポートと明記されています.さらに,ATXなので,従来のBXと真っ向から対決する形になります.Pentium3はまだ高価ですが,スロット1タイプのPentium2 400MHzや350MHzも安くなってきています.システムバス100MHzでしかも,グラフィックスカードとの互換性を考えなくてもよいのですから,非常に興味があります.
 これらの写真やテストも順次進めていきます.また,このモデルがサウンドを切ることができる仕様なら,PCIサウンドカードを使うことでCPUの負荷を減らすこともできるわけです.この点はモデムについても同様で,ソフトウェアモデムを使わなければ,CPUの負荷はそれだけ軽くなるわけです.問題は,切ることのできないグラフィックスのみです.このを除くと,PCIが5本ですから拡張性もあります.現時点では,インテルのデモボードを作っているだけに,DFIが一種の標準となっています.810の命運を分ける製品といっても過言ではないでしょう.オーバークロックではなく,システムバス100MHz動作を実現できるのですから,安定性も万全です.

 なお,グラフィックスについては,TNT2がいくら速くても,それを必要とするソフトウェアがほとんどないため,効果的かどうかどうも判断しかねます.このソフトウェアにはFinalRealityなども含まれるので,ベンチマークでも大きな差は出ません.
 2Dが確かに速くなっていることは,すでにテスト結果から明らかですが,ここまでの速さが2Dで不要であることもまた真実です.ゲームは,ゲーム専用機でする,という人には,TNTクラスで十分です.また,AGPを使わないバンシーカードなどをPCIに取り付けて動作するかどうか,これは,やってみてのお楽しみです.要するに,いち早くテストしてみたい,の一言につきます.


プロコンプ
 プロコンプ社も810製品に意欲的で,複数のラインナップを用意しています.もっとも速く出てくるのは,BIW1Aというソケット370メインボードで,ISA 1本を搭載しています.サウンドチップは搭載していませんが,サウンド付きもリリースされるとのことです.

b1w1a-3.jpg (49808 バイト)


 実は,ジュリアスも810にはサウンドがあるのにどうしてサウンド付きのものがあるのだろう,と思っていました.せっかく,プロコンプ社のピーターさんに会ったので理由を尋ねると,810のサウンド機能では機能的に不足するからたとえばYAMAHAのサウンドを搭載して欲しい,という依頼が実際にアメリカからあるのだそうです.これで,810のサウンドが切れることが分かりました.そして,グラフィックスも切れるかどうか尋ねましたが,グラフィックスは切れないそうです.

ギガバイト
 ギガバイト社も,GA-6WM7というMicroATXソケット370メインボードとGA-6WXMというスロット1ATXメインボードをリリースします.ソケット370の方が先のリリースとなります.特徴は,ISAを1本搭載していること,そして,ギガバイトの特徴である,メモリへのサスペンド機能やデュアルBIOSが搭載されていることです.

0511g011.jpg (17489 バイト)


 また,YAMAHAサウンドはオプションで実際に日本市場に出るのがどのタイプになるかは不明です.どちらも4MBの3Dディスプレイキャッシュを搭載していますので,810-DC100を使っているのですね.
 

810とその意義について・・・BXはどうなるのか?

 インテル側の話によると,810はBXクラスの性能で,グラフィックスとサウンド機能を追加したにも関わらず,価格はBX並ということです.超お買い得メインボードを実現することができることになります.しかも,ソフトウェアモデム対応なのでAMRに安価なモデムカードを取り付けるだけでモデムも入手することができます.
 しかし,これらの処理はすべてCPUが行うわけですから,速いCPUを使わなければ,処理全体が遅くなる,という欠点を持っている点に注目することも重要です.810メインボードを使用しても,サウンドやモデムをPCIに取り付けることで,CPUの負担を軽くすることができますが,そうすると,安価なマシンからは遠ざかっていきます.ネットワーク機能の統合が見合わされているのもこういった事情もあるのかもしれません.
 リリースされる810メインボードでもサウンドチップ付きがありますが,せっかくの810ですから,純粋の810メインボードのサウンドを聞いてみたいです.

 問題となるのは,810はシステムバス100MHz以上に対応していても,実際の製品はソケット370からというのが実状で,スロット1タイプの出荷は後になるメーカーが多いのです.
 理由はいろいろと考えることができます.まず,810はお買い得メインボードを作るためなので,ソケット370が適している,という考え方です.インテル社のマーケティングもあり,スロット1CPUはPentium3だけとなります.しかし,Pentium3を使うなら,BXメインボードでグラフィックスTNT2と行きたいところです.この点を考慮してか,新しいBXメインボードをリリースする予定のメーカーもあります.
 そうなら,スロット1タイプの810メインボードは不要となるのでしょうか.現実にはそうではありません.なぜなら,市場にはスロット1タイプのCeleronやPentium2がまだありますから.システムバス100MHzに完全安全対応したPentium2を利用できる810メインボードには大きな意義があります.また,ドーターカードを使用することで,ソケット370CPUを使うこともできます.スロット1にしておけば,どちらでも使えるわけです.それなのにソケット370タイプからのリリースということになると,これが世界的な流れなのか,インテル社の指導によるのか非常に気になります.

 現在,その意味で独自の立場にあるのがDFI社です.DFI社はインテル社のデモボードを作成しています.デモボードですから当然スロット1タイプもあります.DFI社がいち早くスロット1タイプの810メインボードをリリースするのです.DFI社は,このスロット1タイプの810メインボードをぜひテストして欲しいとのことです.テストするということは,実際に動作するボードが完成するという意味です.これは,他社の動きを見る限りでは,すごいことだと思います.来週には,結果を報告できるでしょう.

 グラフィックスを切り離すことのできない810では,グラフィックスのアップグレードがPCIの利用でしかできません(実際のところAGPスロットを搭載している810メインボードは見かけません).しかし,810搭載のインテル752はTNT相当だとするなら,実際の使用には全く問題ないはずです.TNT2がいくら速くても,TNT2の速さを必要とするソフトウェアが存在しない限り810で十分と言うこともいえます.

 EPoX社などでは,810よりもBXやMVP4の方が,DIYユーザーのアップグレードに対応できると考えているようです.BXメインボードなら,TNT2を使い超ハイパフォーマンスマシンを組み立てることができます.このとき,問題はBXがATA66に対応していないことです.私が,TRY!PC夏号で紹介したように,ATA66(第1世代)のパフォーマンス増加が20%くらいで,XstoreProなどのバスマスターユーティリティを使えばATA33でもATA66並に速くなるなら,このままではBXが有利となるでしょう.

 しかし,統合型チップの利点は,その統合そのものにもあるのです.たとえば,グラフィックスを統合しているSiS530のグラフィックスはSiS6326相当ですが,チップセット内でデーター転送するため,6326搭載のAGPカードよりも速くAGP処理することができます.このメリットを810は持っています.810の最大の欠点は,統合が故,バグあるとチップセット全部を交換するしかない,という点です.
 結局,TNT2+バスマスターユーティリティ付きATA33+BXメインボードとATA66付き810メインボードを比較してみたいわけです.もちろん結果は来週終わりには発表できるでしょう.

 しかし,結果をそのまま信じて今後のみなさんの進む道を決めるのはある意味で危険です.なぜなら,以上の議論はすべてユーザーサイドの話ではなく,メーカーサイドの話だからです.そもそも,ソケット370自体がユーザーの声を反映したもののは言い難いですし,もしそういうなら,スロット1自体もそうでしょう.コンピュータ自体を目的として遊ぶなら全く問題ないわけですが,コンピュータを仕事で使うなど,道具とするなら,目的に応じた道具を使えば十分です.決してメーカーの考えに影響されてはなりません.使いたいソフトウェアを利用するのにもっとも適したマシンを使えばよいのです.Julius Iwamura Hardware Pageでは,そういった主観的調査結果も掲載し,数字だけには惑わされない情報を発信していきたいと思っています.

 各メーカーが,ユーザーのためを思っているのかいないのかは別として,私たち自身が判断していかなくてはなりません.今回の810により,「統合型チップセット使ったマシン」と「自由にパーツ組み合わせて性能を自分で調整できるマシン」という2つの流れができてしまいました.後者で自分の目的にあわせるのがよいのでしょうが,価格的にメインボードより高価なグラフィックスカードではコスト的につらい,というのも事実です.その意味で前者の意義は大きいのです.そのかわり,BXチップセットの寿命も延びました.


 
注:ちなみに,BXチップセットでも,UltraATA66カードをPCIに取り付けるという方法で,UltraATA66ドライブを使うという方法もあります.しかし,このカードがいくら速くても,PCIに取り付ける以上,PCIのバス転送速度の制約を受けることになります.このあたりは,いずれ検証する必要がありますね.

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(*) 5/14 Tekram社S381-Mの写真を掲載しました.


Copyright 1999 岩村 益典