さらに進む論理設計のソフトウェア化

 また,マイクロプロセッサは設計対象としてだけでなく,設計支援ツールとしての役割も担うようになってきた.パソコンの大容量化,高速化により,以前は大型コンピュータを保有する大企業でなければ使えなかった設計支援CADやシミュレータが,自分のデスクトップにも置けるようになったのである.

 これによって,CADの使用を前提とした高レベルの論理合成が可能になり,大容量FPGAやPLDがより広い層のエンジニアにも使えるようになり,ディジタル系の回路設計はますますソフトウェアを指向するようになる.論理設計のソフト化は,動作の確認をシミュレータを使うことにより試作することなしに行える,論理回路ライブラリを使用することにより設計工数を低減できるなどの効果が期待でき,今後は論理回路設計の基本技術となることは間違いないだろう.

 楽観的かもしれないが,インターフェース用の特殊なゲート素子を除けば,単体の論理回路LSIはPLDなどによって淘汰されてしまうと考えてもよいのではないだろうか.

 さらに,回路設計のソフト化により,設計に必要な論理情報の電子流通も可能になってきている.すでに,価値が高い論理機能の設計情報はIP(Intellectual Property)として市場流通をはじめているし,インターネット上ではLSIメーカーが自社製品のデータシートをPDF形式で公開することが一般化している.

 かつては,設計者の仕事の一部として,データシートの入手やファイリングに大きな手間をかけていた時代と違う形で設計情報が流通しはじめている.

 図2は,電子システム設計者が関与する領域の変遷を示したものだ.

〔図2〕電子システム設計者が関与する領域の変遷



◆ あまりに広いエレクトロニクス分野
◆ エンジニアは何を中心に設計してきたか
◆ マイクロプロセッサが変えたエンジニアの必修科目
◆ さらに進む論理設計のソフトウェア化
◆ 21世紀初頭のエレクトロニクスエンジニアに求められるもの

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Copyright 2001 山本 強