組み込み機器におけるGUIの必要性
ユーザーの要求,利便性,ハードウェア/ソフトウェアの進歩

◆OA製品の場合

 そして,OAの分野にもGUIの採用は進んでいる.FAX/コピー兼用機などは機能の選択・設定にGUIを採用している(写真5).用紙の選択や拡大縮小など,設定する項目も多いため,GUIの採用は必然的なものだったのだろう.また,ネットワーク機器でも,たとえば表示機能をもたないルータなどは,外部のブラウザからGUIで設定を行うようになっている.ネットワーク機能を最大限に活用し,表示部の削減を図るというのは思い切った選択だとは思うが,設定項目の多さなどを考えると,外部からGUIで設定するという方式は非常に合理的な考え方に基づくものであるといえる.

〔写真5〕FAX/コピー兼用機のGUI

◆開発機器の場合

 従来はフロントパネルにボタンやつまみが並んでいるというイメージが強かった測定器の分野でも,GUI化が進んでいる.オシロスコープ(写真6)やロジックアナライザ,プロトコルアナライザはWindowsなどのOSを搭載し,マウスでの操作や画面へのタッチで設定を行うことができる.とくに設定する項目が多い場合,GUIによる画面の切り替えなどは非常に便利である.

〔写真6〕オシロスコープのGUI〔レクロイ・ジャパン(株),WaveShape Analyzer WaveMaster8500/8300シリーズ〕

 また,PCとの連携により,測定器などの制御や表示をPC上のGUIで行えるようになってきている.

 ハードウェア/ソフトウェアの多くの情報を同時に取得し,さまざまな測定条件の設定を行うにはGUIが最適ということなのだろう.

◆大型機器の場合

 据え置き型の組み込み機器でもGUIの採用がさかんになっている.

 身近な例としては,駅の券売機,銀行のキャッシュディスペンサー,ソフトの自動販売機などが挙げられる.これらは,従来のボタンを並べる方式では実現が難しかった複雑な機能の実現や,大量のデータ表示のためにGUIを採用している(写真7写真8).たとえば,駅の切符販売機では精算の複雑な手順をGUIによって簡略化し,キャッシュディスペンサーでは振り込みの際の指定を簡単に行えるようになっている.ここで一貫しているのは,「複雑なオペレーションをユーザーに簡単に理解させ,容易に使えるようにする」という考えである.従来は人が行っていたことを機械によって並行して行えるようになり,利用者の利便性は大いに増しているはずである.

〔写真7〕従来の券売機 〔写真8〕GUIを採用した券売機

● 利便性

 これまで見てきたように,ユーザーが要求するのは,「多機能化」と「利便性」である.

 GUIは直感的に扱うことができ,かつ画面の切り替えによって大量の情報を表示することが可能だ.たくさんの選択肢の中から効率的に探したいアプリケーションやデータを探し出すには,GUIのほうが明らかに優れている.

 だからといって,従来のボタン方式やコマンド方式を否定しているわけではない.ジュースなどの自動販売機(写真9)はボタン方式を採用し続けている(ジュースの自動販売機のGUI化――すぐに想像できるだろうか?)し,UNIXのシェルなどは慣れてしまえばGUIなどよりも高機能で使いやすい.要はGUI化されるのに適した箇所にGUIが採用されることで,利便性が驚異的に良くなるということなのである.

〔写真9〕ジュースの自動販売機

● ハードウェア/ソフトウェアの進歩

 身の周りのものが次々とGUI化される背景を語るとき,ハードウェア/ソフトウェアの進歩を抜きにすることはできない.小型マイクロプロセッサの進歩,液晶技術の発展,GUIを実現するソフトウェア技術の向上などの結果,現在のような状況になっている.

 とくにマイクロプロセッサの機能の向上が最大の要因だろう.組み込み型の小型RISCの登場なくして,GUIシステムを不自由なく動作させる環境は実現できなかったに違いない.

 機器が次々とGUI化される傾向は,CPUの発展が最大の要因であるといえる.


インデックス

組み込み機器におけるGUIの必要性
 ユーザーの要求
 ユーザーの要求,利便性,ハードウェア/ソフトウェアの進歩

GUIとは何か


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