ここで一つ確認をしておきたいのだが,GUIというと,WindowsやMacintosh,Xなどがまず思い浮かんでしまうため,「GUI」=「Windowシステム」というイメージがあるかもしれない.たしかに,デスクトップPCの分野においては,この認識は正しいのかもしれない. しかし,Windowシステムでありながら,実質的にはCUI(Character User Interface)であるというシステムもたしかに存在する.Xのkterm(写真10)やWindowsのコマンドラインなどは,そのような例ではないだろうか.
また,組み込み分野の製品でWindowシステムを実装する例は少ない.しかし,GUIを実装している機器はたくさんある. 本特集で扱うGUIは,あくまでも組み込み向けなのでGUI≠Windowシステムという例が多くを占める.この点がPCなどと組み込み機器の最大の違いであるといえるだろう(図2).
● GUIの利点 これまで挙げてきたように,GUIの利点はたくさんある.ざっと挙げてみるだけでも,次のような点で優れているといえる(図3).
・直感的な操作でわかりやすい ・多種類の機能を実装できる ・小型の機器でもユーザーが扱いやすい環境を実現できる ・大量の選択肢を,わかりやすい形で表示できる ・たいていの場合はマルチプロセス/マルチタスクであるため,一度に複数の操作を同時に行うことができる ・ボタンやキーボードが不要なので機器を小型化できる ・機械的部品(スイッチやボタンなど)を削減できるため機械的な故障に対しても強い ● GUIの欠点 とはいえ,GUIが万能ではないという点にも注意しなければならない.無理にGUIにする必要のない用途も確実に存在するし,逆にGUIでないほうがわかりやすく,かつ便利になる場合もある.以下にGUIの欠点を挙げてみる. ・CPUパワー,メモリなど,大量のリソースが必要とされるため,コストアップは避けられない ・音声ナビゲーションなどがない限り,視覚障害者には使うことができない.たとえば券売機などでは視覚障害者向けにテンキーを用意している(写真11)
・UNIXのシェルのように一度に複雑なことができない ・慣れてしまうとGUIの操作は煩雑に感じられるようになる ・コマンド方式やボタン方式のほうが適している分野も数多く存在する まとめ 以上のように,世の中は確実にGUI化の方向に向かっているが,GUIが万能のユーザーインターフェースでないこともまた事実である. ユーザーのニーズ,製品の使われ方をよく吟味したうえでGUIの採用は決定されるべきである.また,明らかに使いにくいGUIも存在する.GUIの設計にあたっては,注意深く仕様の検討が行われるべきだろう. 次章以降では,具体的なGUIの実現方法が解説されるが,実現する前に「よく考えること」を怠ってはならないのだ. 以降の内容は本誌を参照ください Copyright 2002 井上史雄 |