はじめに

 筆者がインターネットのメールを使い始めたのは,もうかれこれ15年以上も前のことになる.当時は,日本からのメールは「バケツリレー方式」で米国のインターネットへのメールゲートウェイへ運ばれ,それからインターネット上を目的の大学のメールホストへと運ばれていった.当時のインターネットのバックボーンは何と56kbpsの回線を使用していた.これでも,当時は超高速ネットワークだったのである.現在のブロードバンドといわれている回線の速度を考えると,隔世の感がある.

 その当時は,インターネットがこれほど普及し,産業革命を起こすとは思いもしなかった.また,「インターネットバブル」が目の回るような速さ,すなわち1年で7年分が進むドッグイヤーで世の中を動かすとも想像できなかった.

 このインターネットバブルが崩壊しつつある今,ほっとしているのは筆者だけではあるまい.ちょっと前まで,インターネットプロトコルやブロードバンド関係の標準化にはヤジ馬までもがおしかけ,そこは技術の本質はそっちのけで黒を白と言いくるめるマーケティング活動の場と化した.

 そのような混沌とした状態では,技術の方向性をつかむことは困難である.落ち着きを取りもどしつつある現在は,メインストームのブロードバンド技術について整理し,技術の流れをつかむ良いタイミングとなっている.

 そこで本稿では,ブロードバンド時代のネットワーク技術を,背景,位置付け,そして技術の方向性を中心にまとめる.なお,ここではデータネットワーク,とりわけインターネットへのアプリケーションを前提として議論を進める.また,ふだん目にすることの少ないSONET/SDH(Synchronous Optical Network/Synchronous Digital Hierarchy)やDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)などのバックボーン技術についても説明する.

 誌面の都合上,物理層とリンク層の技術に話を絞り(図1),IP-VPN(Internet Protocol-Virtual Private Network)やMPLS(Multiprotocol Label Switching)のようなネットワーク層と関連する技術,ビデオ伝送などのアプリケーション層の技術,音声技術などに関しては,別の機会にゆずることにする.

〔図1〕インターネットのレイヤモデル


1. はじめに

2. ブロードバンド技術のカテゴライズ
バックボーン,アクセスネット,ローカルネット

3. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-光ファイバ

4. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-銅線を使ったもの

5. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-電波を使ったもの


9月号特集トップページへ戻る


Copyright 2001 村上健一郎