5. 物理層によるカテゴライズ-電波を使ったもの

1)スペクトル拡散方式とは

 さまざまな電波を使った方式がベースとしているのは,スペクトル拡散方式(Spread Spectrum:SS)である.これまで,限られた周波数帯を共有するには,それぞれが使用する周波数帯を狭くしたり,時間ごとに使用者を切り替えていた.しかしSS方式では,同じ帯域上に信号を拡散させて多重化することにより,限られた周波数で同時に通信を可能とする.

 SS方式は,このような帯域の有効利用だけでなく,秘話性,妨害波や干渉波の排除性といった利点ももつ.SS方式の一つである直接拡散方式(Direct Sequence:DS)では,送信時に,送るべき信号の帯域よりも大きな帯域をもった拡散信号PN(pseudo-random number)符号を掛け合わせ,それを送出する. 受信時には,送信時の拡散信号を掛け合わせて(逆拡散),元の信号に戻す.

 もう一つの方式,周波数ホッピング(Frequency Hopping:FH)では,あるパターン(ホッピンパターン)で搬送周波数を変更することによって信号の拡散を行う.受信時には,同じパターンを使って信号を元に戻す.これらの方式で,各利用者が異なるPNやホッピングパターンを使えば,同じ周波数帯で一度に多数の人がアクセス可能となる.これをCDMA(Code Division Multiple Access)と呼ぶ(図11).

〔図11〕スペクトル拡散通信方式

2)無線LAN

 電波を使用したネットワークで急速に立ち上っているのは無線LANである.これらは,おもに電波使用の免許が不要な2.4GHzの周波数帯域を利用する.これらを表3に示す.その一つであるIEEE802.11bは,もともとアップルとルーセント・テクノロジーが共同開発したもので,最大11Mbpsの速度を提供する(実効速度は,6m程度離れた場合に5Mbps程度ではないかといわれている).

〔表3〕無線LAN

 

以降の内容は本誌を参照ください

1. はじめに

2. ブロードバンド技術のカテゴライズ
バックボーン,アクセスネット,ローカルネット

3. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-光ファイバ

4. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-銅線を使ったもの

5. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-電波を使ったもの


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Copyright 2001 村上健一郎