4. 物理層によるカテゴライズ-銅線(電話線,同軸ケーブル,UTPなど)を使ったもの

 銅線は光ファイバに比べて扱いやすいという特徴がある.たとえば,光ファイバは曲げに弱く,それなりの注意を払う必要がある.また,最近ではさまざまなツールが登場して便利になったものの,光ファイバケーブル同士の直接接続や,ファイバとコネクタとの接続には熟練した腕が必要であり,作業時間もかかる.しかし,銅線のほうには光ファイバに比較して信号の損失が大きいという問題がある.また,電磁誘導にも弱い.

 ほとんどのLANは銅線を使用している.使用される銅線はシールドされていないツイストペア線「UTP」(Unshielded Twisted Pair)である.たとえば,10Mbpsイーサネットの10Base-T,100Mbpsイーサネットの100Base-TX,ギガビットイーサネットの1000Base-Tなどである.それぞれのケーブルの最大延長距離は,10Base-TXがカテゴリ3の品質のケーブルで100m,100Base-TXと1000Base-Tの場合には,カテゴリ5の品質のケーブルで100mとなっている(表1).

〔表1〕おもなイーサネット規格の比較

なお,100Base-Tは以下の総称

  100Base-T2(10Base-Tのカテゴリ3ケーブルを使用可)
100Base-T4(カテゴリ3ケーブルの4ペアを使用)
  100Base-TX(10Base-Tとの混在が可能)

 また,アクセスネットで銅線を使用しているものもある.たとえば,xDSLは従来の電話線を使用して数百kbpsから数Mbps程度の速度を提供しようとするものである.これらは,従来の電話で使用していない周波数帯域を利用するため,電話とxDSLとを同時に使用することができる(図8).

〔図8〕xDSLの例

  xDSLには,多くの種類がある.たとえば,上りと下りの速度が対称のHDSL(High-bit-rate DSL)やSDSL(Symmetric DSL),非対称のADSL(Asymmetric DSL),数十Mbpsの転送速度をサポートする非対称速度のVDSL(Very High-bit-rate DSL)などがある.米国ではISDNを専用線サービスに使用したものをIDSL(ISDN DSL)と呼ぶこともある.これらを表2に示す

〔表2〕xDSL――各方式の概要

 CATVのケーブルモデム(ケーブルインターネット)は,同軸ケーブルを使用して下りが最大30Mbps,上りが100kbpsから数Mbpsの速度のサービスを提供できるものである.これは,下りの速度と上りの速度の違う非対称サービスである.これまでのCATVの空いた帯域を使用して双方向の通信を提供する.

 方式によっても異なるが,たとえば上りは5〜42MHzの中の約2MHzを使用し,下りは88〜860MHzの空いた帯域の中の約6MHzを使用することになっているが,通常は420MHzより上の周波数帯域を使用する(図9).場合によっては,複数の帯域が使用されることもある.

〔図9〕CATVの周波数利用の例

 なお,家庭への配線は同軸であっても,CATV局と500〜2000世帯をまとめたセルという単位までは光ファイバで信号を伝送し,それから先の各家庭までを同軸ケーブルで接続するHFC(Hybrid Fiber Coax)方式が急速に普及している(図10).

〔図10〕HFCの例


1. はじめに

2. ブロードバンド技術のカテゴライズ
バックボーン,アクセスネット,ローカルネット

3. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-光ファイバ

4. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-銅線を使ったもの

5. ブロードバンド技術のカテゴライズ
物理層によるカテゴライズ-電波を使ったもの


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Copyright 2001 村上健一郎