● JPEG2000がついにIS化! カラー静止画像を情報圧縮符号化するための新しい規格であるJPEG2000が2001年1月にIS(International Standard)化され1),その普及に大きな期待が寄せられている.正確には,基本方式と呼ばれるJPEG2000 part1のIS化である.この基本方式とは, 1)JPEG2000準拠の復号器(Decorder)が必ず満たすべき条件を規定したもの 2)使用される技術は,特許的にフリー宣言またはそれ相当の宣言がされたもの であり,符号化の根幹の技術方式である. 引き続き,動画像符号化の規格であるMotionJPEG2000も含み,part2からpart7までの検討が進められている(MotionJPEG2000はpart3).これらの方式は,カラー静止画像の符号化標準規格であるJPEG,動画像の規格であるMotionJPEGやMPEGと市場的に競合する.本章では,JPEGやMPEGとの比較という観点からJPEG2000の魅力を紹介し,新しい画像圧縮技術の流れとその可能性について述べる. ● JPEG2000の市場性 JPEG2000の規格化の段階から,その応用市場は検討されており,Requirements&Profiles Documentという文書にまとめられている2),3).そこでは,図1に示すように,インターネット,ファクシミリ,プリンタ,スキャナ,ディジタルカメラ,人工衛星画像,モバイル機器,医療,ディジタルライブラリ,電子商取引などの応用例が紹介されている.
以上に挙げた応用のほとんどは,すでにディジタル画像の市場として存在しており,現在JPEGやMPEGなどの既存の符号化法が適用されている.したがって,その市場がJPEG2000やMotionJPEG2000に置き換わるかどうか,さらに従来方式では困難だった新しいサービスを提供できるかが多くの関心を集めている. ● 本稿の構成 本稿では,JPEGやMPEGとの比較の観点から,JPEG2000の特徴を紹介し,その利点と課題について述べる. 具体的には次の項目について解説する. a)JPEG2000の符号化手順の概要 b)JPEG2000の特徴 c)MPEGとMotionJPEG2000の比較 後述するように,JPEG2000のおもな特徴は, a)高品位符号化(高ビットレートから低ビットレートまで) b)高い階層性(空間/SNRスケーラビリティ)をもつ符号化 c)可逆符号化と非可逆符号化の統合 d)多様な画像の容易な取り扱い にある.これらの特徴を,数値実験の結果も含めて具体的に紹介する. JPEG2000の要素技術の詳細や理論的背景については次の第2章で解説する.また,JPEG2000の規格化に至るまでの経過や今後の予定については,すでに多くの文献において紹介されているので4)〜12),本稿では割愛する.
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