1.2 現在の開発動向 

 ディジタル放送システムの開発は,LSI化,圧縮符号化,ディジタル変調,CPU,メモリなどの発展とともに,1990年代に各国,各地域において独自に進められてきました.図2に,日米欧におけるディジタル放送の導入状況を示します.

[図2] ディジタル放送の導入状況

 

 (約38Kバイト)

 ヨーロッパでは,1990年代の初めにイギリス,フランス,スウェーデンといった国ごとにディジタル放送方式の開発が進められていましたが,1993年にDVB(Digital Video Broadcasting)プロジェクト(http://www.dvb.org/)が発足し,全ヨーロッパとしての取り組みが行われるようになりました.

 その成果として,DVB標準ファミリと呼ばれる衛星,地上,ケーブルなどの伝送方式規格,SI(Service Information)規格などが作られています.これらの規格に基づく多チャネル衛星ディジタル放送サービスが1996年から開始されています.地上波ディジタル放送については,最初にイギリスで1998年から開始されています.

 また,米国においてはNTSCNational Television Systems Committee)方式の後継となるテレビ方式の検討が1988年に開始され,ディジタルHDTV(HD:High Definition)による地上波放送方式が1996年にATSCAdvanced Television Systems Committee)により作成されました.そして,1998年から放送が開始されています(http://www.atsc.org/).一方,衛星ディジタル放送については,1994年からDirecTVなどにより開始されました.

 日本では,DVB方式をベースとしたCSディジタル放送が1996年から開始されています.そして1997年に,2000年に打ち上げる放送衛星によるテレビ放送をディジタル方式で行うことが電波監理審議会で決定され,日本のBSディジタル放送方式の開発が進められ,今年12月から放送が開始されます.

 また,地上波ディジタル放送方式についても2003年末までに3大都市圏(関東,関西,中京)で放送を開始できるように開発が進められています.今後数年間にわたって,次々と衛星波,地上波,ケーブルのディジタル化が進められる予定です.

 放送方式としての特徴に注目して開発動向をまとめると,当初は,多チャネル放送サービスを実現できるメリットから放送システムが導入されました.次に,ハイビジョン映像による高品質化,マルチメディア機能などによる多機能化をはかったディジタル放送システムが開発・導入されてきています.

 現在,次のステップとして,モバイル(移動受信)対応のディジタル放送システムが開発中もしくは開発されており,今後導入されることになっています.

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1.1 ディジタル放送のシステムイメージ
1.2 現在の開発動向
1.3 ディジタル放送のサービスイメージ
1.4 システムモデル
1.5 プロトコルスタック
   参考文献

 


Copyright 2000 吉村 俊郎