Rev B 10/23
Rev A 9/25
SIMD対応NT専用OpenGLカード
Diamond Multimedia FireGL1
Diamond Multimedia社は従来よりFireGLシリーズというOpenGLアクセラレータを投入しています.これらは3D
Lab社のPermediaというワンチップOpenGLアクセラレータを採用した製品でした.発売当初のパフォーマンスに対するインパクトは非常に大きく,印象的なものだったのを記憶しています.
しかし,ローエンドのTNT2カードなどが,Permediaチップを搭載したビデオカードよりも高いOpenGL性能を提供しはじめてしまったために,FireGLシリーズは,安価で,速度もそこそこ,それなりのパフォーマンスという印象になってしまったと思います.そこで,Diamond
Multimedia社はFireGLシリーズの威信をかけて次世代OpenGLアクセラレータカードを製品化しなければならなかったわけです.
このような背景から,登場したのがFireGL1というわけです.当初,筆者などはFireGLシリーズなので3DLabs社の次世代Permedia3チップを搭載するものだと思っていたのですが,Diamond
Multimedia社は,IBMの256ビットのグラフィックラスタライザを搭載したのです.
このチップとPentiumIIIのマルチスレッドドライバによるSIMD支援によってOpenGLを高速に実行しようと目論んだわけです.これは意外でした.専用OpenGLチップよりも高速ラスタライザと汎用CPUによるマルチメディア新命令にFireGLシリーズの命運を賭けたわけです.では,この賭けの結果はどうだったのでしょうか?
速い!FireGL1!
OpenGLの計算をSIMD新命令によるソフトウェアで計算するということ自体は,3D
Labsが最近出荷したOxygen VX1に構成が似ています.VX1もOpenGLの計算にPentiumIIIのSIMD機能の支援を受けています.FireGL1はいかがなものでしょうか?
結果は上図のように,VX1の上位機種であるGVX1を通り越してSGIのNTマシンに届く勢いです.専用のジオメトリプロセッサをビデオカードに積まなくてもここまでできる!
というDiamond Multimedia社の雄叫びが聞こえてきそうです.この図にはSIMDを持たないCPUであるPentiumIIでの結果も計ってみた結果を載せています.クロック比よりも性能差が出ていることに注意してください.これだけでもSIMDによる効果があるのだと痛感します.
今回はシングルプロセッサによる評価になりますが,デュアルプロセッサやクアッドプロセッサ構成になったときにはドライバがマルチスレッドとして記述されていることが利いてきて,GLの本家,SGIから出されているNTマシンのパフォーマンスを超えることができるのかもしれません.価格もハイエンドOpenGLカードとしては,安価な部類です.なんとも恐ろしい時代になったものです.
NTでしか動かない
FireGL1はNTでしか動作しません.正確に言うと,Windows
98のドライバが提供されていないのです.プロフェッショナルCG屋がWindowsを使う場合にNT以外のプラットフォームを使うかどうかは考え物ですので,この実装は正しい選択でしょう.最新のOxygenシリーズのようにWindows
98上のDirect 3Dもアクセラレーションできるというカードではありません.注意が必要です.
まさか,ゲーム用Videoカードより高価なOpenGLカードを買って,Windows
98上でゲームがしたい,というユーザーはいないと思いますが・・・.しかし,次期Direct
XがOpenGLのようなビデオカード側の性能をあてにする構成になるならば,その時のFireGL1の性能を見てみたい気もします.Windows
98上でのDirectXはシングルプロセッサにしか対応しないので,FireGL1にとっては無縁な存在ですが,Windows
2000のDirect 3Dではいかがなものなのでしょうか?
ドライバは最近のどのGLカードにもあるように,主要アプリケーションで最大のパフォーマンスが出るように対応する機能が盛り込まれています.下図はその設定ダイアログです.
FIREGL1がサポートしているアプリケーション
ボードの構成
写真を見ていただければわかるとおり,大きなチップが搭載されています.これが256ビットのIBMのGLチップです.かなり速いクロックで動作しているらしく,グラフィックチップとしては大きめのファンで冷却されています.動作中,基盤の裏を触ってみると冷却しているにもかかわらず,かなり熱くなっているのが確認できました.このチップはBGAで基盤に取り付けてありますが,裏は,256ビットというデータバスのせいなのか,中央まで端子のランドがびっしりと敷き詰めてあります.
見ていただけばわかるとおり,VRAMの配置もこれでもかと言わんばかりにビッシリ並んでいて異様でさえあります.アクセラレータは100MHzのメモリクロックで動作しているようです.
FIREGL1カードの情報
SIMD命令をサポートしていないとこのようなエラーが出る
まとめ
FireGLのコストパフォーマンスの高さには目を見張るものがあります.このカードは買いです.ほかのカードとのパフォーマンスの比較と懐具合を天秤にかけて選びましょう.1999年9月現在では期待を裏切らないカードといえます.
FireGL1は初期のFireGLシリーズ同様のインパクトがあります.現在のFireGL
1000のようにFireGL1が遅いカードと思わせるような日が本当にくるのでしょうか?そんなことをフッと考えてしまいました.
(*) 商品の問い合わせ先:(ダイアモンド・マルチメディア・システムズ)http://www.diamondmm.co.jp/
(*) 計測時の環境; CPU-PentiumIII 600MHz マザーボードASUSTeK製P2BF
戻る
Copyright 1999 片岡
宏仁