ところで,計測のもともとの原点は,メジャー(measure)との比較である.日常において,ものの重さを量るときは,重量計にそれを乗せて針が指す数字を読むだろうが,それよりもシンプルな測定法は,測りたいものと同じ程度の重さのもの(その重さはあらかじめわかっている)をもってきて,それと比較することである.すなわち天秤である.
このように,被測定物との差が零(ゼロ)になるようにリファレンス(参考物)をもってきて,そのバランスを取って測定する方法を零位法と呼ぶ.
たとえば,目で見てわからないほどの長い棒の長さを計るとき,私たちは図9に示すように,別の棒や紐をもってきて,それと比較する.図に示す2本の棒の長さは同じだが,じっと見ているだけでは人間の目の錯覚(人間による正しくないデータ処理)によって上のほうが長く見えてしまう.もう1本,これらと同じ長さの枝のついていない棒を用意し,それぞれの近くにもっていくと,互いの長さが,この参照用の棒との比較を介して同じであることがわかる.
目で眺めているだけではなく,別の棒をもってくることによって正確な計測が行われるわけである.
〔図9〕棒の長さの計り方
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Copyright 2001 河田 聡
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