5.間接的計測法――ハイフネーティッド計測法

 一方,直接的にはどうしても出力が得られないような対象に対しては,間接的に測る方法が考えられる.たとえば,真黒な材料の光の透過率を測るためには,これまでは,それをできるだけ薄く半透明になるまでスライスして透過率を測り,そのときの厚さでノーマライズする方法がとられてきた.しかし,スライスできる薄さにも限度があり,また,こういった試料を破壊して測る方法は,科学計測においてはとくに嫌われる.

 そこで,試料に光を入射して,そこから発生する熱(温度)を測ることによって,それからその物質の光に対する透過率を求めることができる(図8).吸収された光が熱に変わるからである.あるいは,光の吸収による温度変化があまり小さく,周辺の環境温度の変化より小さいなら,照射する光を(たとえば)1kHzでON/OFFする.すると,1kHzで熱波もON/OFFされ,それによって,試料か周りの空気が1kHzで膨張収縮を繰り返す.これは音として,われわれの耳あるいはマイクロフォンに聞こえる(図8).

図8光熱計測法,光音響計測法




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 このような方法は,ハイフネーティッド(ハイフンで二つの計測法が結ばれるから.この例では,光-熱,あるいは光-音響)計測法と呼ぶことができる.上の例では,測定波長を変化させていき,普通の計測法では測ることができない真っ黒な物質の色(もっとも,可視域ではなく赤外のスペクトル)を計ることができる.これを光音響分光法と呼ぶ7)


参考文献
7) 沢田嗣郎,『光音響分光法とその応用』−PAS,学会出版センター


1. データ処理の役割は科学計測の第六感
2. 計測の多角化「センサフュージョン」
3. シングルチャネル検出法――スキャニングの時代
4. 非線形効果の積極利用――ディジタル化への道
5. 間接的計測法――ハイフネーティッド計測法
6. 天秤による計測「零位法」
7. アクティブ制御機構をもつ計測システム
8. 計測プローブのインピーダンス――計っているのか計られているのか?
9. Youngの干渉実験――フォトンは,エレクトロンは,なぜ干渉するのか!?
◆  特集に登場する用語の説明

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