よく知られる物理(量子力学)の実験に,Young の干渉実験がある.これは図14に示すように,一つの電子銃(あるいは光源)から出て,二つのスリットを通過して検出面に到達する電子(あるいは光子)は,検出器面において明暗が相互に変わる干渉パターンを描くという実験であるが,そこで個々の単一の電子(あるいは光子)は,それぞれ片方のスリットしか通らないはずなのに,なぜ干渉強度を与えるのかを調べるというものである. この実験は,残念ながら成功しない.粒子がどちらを通ったかを知るために,スリット近傍(あるいは背後)に電子(あるいは光)検出器を設ける.この検出器によって,電子(光子)がどちらのスリットを通過したかがわかるのだが,残念ながら,それと引き替えに,干渉パターンは消え去るのである.これは,測定計測プローブが信号を変えてしまうために生じる.結局,この実験はプローブの存在を教えてくれていることにしかならなかったのである. 計測することが計測対象を変えてしまい得ることを十分に認識しておけば,そのことを積極的に利用することによって,新たな計測手法が生まれ得る.図2の新しい計測系の形態,アクティブフィードバックは,まさに,このことを実践する形態なのである. 5月号特集トップページへ戻る Copyright 2001 河田 聡 |