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番外編:China Report

中国・北京の電脳事情

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 先日,中国の北京工業大学で講義を行う機会があった.今回はショーレポートをお休みし,筆者が10年ぶりに訪れた北京で何が起こっているのかをつぶさにレポートする.

北京経済特別開発区の将来像の模型

北京経済特別開発区の将来像の模型

● 北京工業大学

 筆者が今回講義を行った大学である.中国の大学といえば,以前は旧ソ連の影響を受け,総合大学が単科大学に分かれたという過去があるが,現在は逆に単科大学が総合大学に統合される傾向にある.北京工業大学も,理科系専門の総合大学のイメージがあったが,この影響で現在では,日本語学科など文科系の学部も存在する.

 現在,北京市政府がIT政策を強力に推進しており,この中心的役割を担うのが同大学である.

 大学構内のネットワークセンター(以下,NCと略)を見学した.学生を含め,総数13,000名あまりが使用するNCは,中国全土の大学の設備としては,清華大学,北京大学についで3番目の規模である.構内のおもな教室棟は1Gbpsの光ファイバで,そのほかの教室も100MbpsでNCと接続されている.大学周辺の公営住宅とこのNCは,100Mbpsの光ファイバで接続されていて,この公営住宅に住んでいる多くの大学職員はこれを利用している.

 また,NCには停電時のための巨大なUPSが2セット用意されている.電源供給が止まっても,8時間は使用可能な設計になっている.UPSとはいうものの,実際に見ると,発電機のような印象を受けた.

 プロキシサーバが3台あり,教授用,学生用,職員用と構内のサーバのアクセスできる範囲を制限している.ほとんどのネットワーク機器が,Ciscoや3Com製だが,大学関係ということもあり,市場価格の何十分の一かの価格でで購入している.NCのサーバも,Windows2000/NT,Solaris,Linuxなど,バラエティに富んでいる.学生のメールアドレスは,卒業時に消去されてしまう.

● 無料プロバイダ

 電話代だけ払えば接続できる,無料(という触れ込み)のプロバイダがかなり多く存在する.実際には,電話代に上乗せして請求しているようだ.入会手続きなどのめんどうな手続きがいらないため,北京市内のかなりの家庭の人は利用しているという.

● ハードウェア/ソフトウェアの価格

 北京市内の清華大学の近くの中※村(編注:※は「朕」の月偏を除いたもの)は,日本の秋葉原のような場所である.ソフトウェア専門店は,いくつか存在するが,やはりハードウェアの専門店が多い.コンピュータ本体は,ディスプレイ付き,PentiumIII 600MHzのものが日本円にして10万円前後.ノーブランドだと,5〜7万円で購入することができる.マイクロソフトの製品で,中国語にローカライズされているものは,日本で同様の製品を買うのと価格的にはほとんど変わりない.外国からの輸入製品も,外国で購入するのと変わりがない.中国製品は,日本の同様の機能をもつものと比較すると,日本の価格の1/8〜1/10で販売されている.ユーティリティ,ゲームがほとんどで,日本円にして,500〜1000円ほどで売られている.

 台湾のCyberlink社のPowerPlayerという,MP3/VCDなど,DVD以外の再生を行うソフトが,40RMB(人民幣,中国の貨幣単位=約15円)で売られていたので,試しに購入してビックリ.日本語のOS上でインストールすると,日本語版がインストールされた.600円で,ちゃんとした日本語版の製品がインストールできるとは意外だった.ほかにもMP3に変換された音楽CDが,かなり陳列してあった.

● 海賊版

 中国では,海賊版,いわゆる違法コピーというものに関する取り締まりが強化されつつある.海賊版を販売している側も購入した側も,現行犯で逮捕されて罰金を払うことになる.観光客ともいえども例外ではない.相場は,CD-Rに二つのソフトが入って,ソフト1本あたり,8RMB=90円.自転車に乗った女性が声をかけてくるのでついていくか,怪しげなCD-Rの専門店の店員に尋ねると,こっそり手書きのソフト価格一覧を見せてくれる.中国で販売されているソフトはほとんどそろっているようだ.ただし,中身の入っていない空のCD-Rを販売する業者もある.文句を言おうにも,当局の取り締りを逃れるため,次の日にはその店が雲隠れしていたりする.

● 北京経済特別開発区

北京経済特別開発区

北京経済特別開発区

 北京市郊外,南東の方向に一大造成地がある.この造成地は,第一期工事地区が16平方kmの大きさで,工場や住宅,遊園地,動物園が順次整備されつつある.天津経済特別区とも高速道路で結ばれ,新幹線に似た高速の列車が走る予定だ.北京空港までは40分で,高速道路で北京市内を迂回する形で結ばれる.2006年には,第一期工事が完了する.

 ここに誘致される海外の企業は,設立後,3年間は無税扱いになり,その後の3年間は税金が半額になる特典がある.現在進出している,あるいは進出予定の企業は次のとおり.第一製薬,資生堂,松下電器,NOKIA,コカコーラ,BMW,ルーセント,NCR,GEなど.

北京経済特別開発区の広々とした風景

北京経済特別開発区の広々とした風景

 10年前,筆者が仕事の都合で,大連から北京に初めて訪れたとき,北京空港も現在のようには大きくなく,北京市内には,タクシーが1,000台程度しかなかった.自動車よりも自転車が多かった時代である.現在では,100,000台のタクシーが北京市内を走っている.10年前とは違い,有名ホテルの前でなくてもタクシーが拾える.自転車も専用道路ができた.北京空港から専用の高速道路ができ,北京空港から北京市内まで,半分以下の時間で到着できるようになった.ここ10年間で,かなりのホテルが,北京市内に乱立した.中※村には,数えるほどしかなかったパソコンショップも,今は,数え切れないほどに増えた.


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