Column ストックオプションによる富の分配
ここ数年,アメリカの経済ニュースでは株のインサイダー取り引きによる不正や汚職が後を絶たない.インターネットバブル中に株価が天文学的数字に引き上げられ,実体も何も残らないインターネット系の会社もシリコンバレーに多く存在した.
最近になって,支給されたストックオプションの経済効果を研究した調査が発表された(サンノゼマーキュリー誌,1月10日発表).結果からいうと,インターネットバブル中にストックオプションを支給された人々は,仕事の内容に関わらずかなりの富を手にしていたようだ.1ドル120円程度の換算でも,平均して日本円で軽く4000万円以上(ピークの ’99年ぐらいに換金した場合を想定)の計算となる.これらは上層部から受付や事務員まで幅広く支給されており,それぞれの格差はあるにしても膨大な富を分配したことになる.また同じ研究では平均的に会社の株取得率が上層部は14%,そして一般社員では19%になっていると指摘している.2000年にバブルが弾けた当時でも,換金した場合一人あたり1500万円程度の計算となる.
この報告書ではストックオプションの民主的富の分配を絶賛しているようだが,さまざまな議論を呼ぶ結果となっている.まずは,すごく機嫌の悪いのは,高価格で株を買ってしまった投資家達だ.結局彼らの富が分配されたともいえるからだ.またストックオプションの恩恵を受けるには,株式が上場する前に入社することが必須となる.これらの社員が本当に会社の価値を上げるために貢献したかなどが問われるわけだ.一般的な傾向として,上場をめざして極端な行動に出るケースが多い(ハイテク系ではないがエンロンやWorldComの不正).また,ストックオプションと引き換えに給料を押さえ込んだ企業も少なくないので,給料の後払い的な意味ももつといえる.
最近,ブッシュ大統領が景気対策の一つに株の配当の無課税を提案した.ほとんど配当を支給しないシリコンバレーの会社にとっては,また新しい株関連の課題となる.
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