Column ストックオプションの扱いについて
不正会計疑惑が多い最近,アメリカ企業で議論になっているのがストックオプションの扱いだ.ストックオプションは,ある価格で株を購入できる権利を与えられる 注A.この価格は,ストックオプション交付日の15%引きなどが多い.株価が上昇すれば将来ストックオプションを行使することで安価に株が購入でき,そのまま売れば現金化できる.もともと重役レベルにしかなかった特権だが,シリコンバレーのスタートアップが一般社員に与えて士気を高めようとしたため,アメリカの多くの企業で広く採用されるようになった.とくに現金の余裕のないスタートアップでは,給与をかなり低めに設定する.給料が低い分,ストックオプションで会社の魅力を得ようとするものだ.
しかし,最近の事件で企業のトップが架空の売り上げを計上し株価を吊り上げたり,問題が発覚する直前に上層部がオプションを大量に行使したなど(インサイダー取引になる),さまざまな問題があった.株主からすると社員だけが安く株を購入できるということは,全体の株価の価値を下げ,一般株主の懐からストックオプションを運営している……という議論が展開されている.上層部の乱用を見ると安易にストックオプションを与えるのは良くないのでは?とかストックオプションには会社側のコストやリスクがあるのでそれを公開すべきだという議論がもっともホットだ.しかしオプションの会社側コストを明記すると赤字に転じる会社があまりにも多いので,かなり慎重だ.また,ストックオプションをコスト化するにしても,価格を明確・正当に評価するのは会計的に見ても非常に難しい 注B.コカコーラなどがオプションをコスト化する方向で最近発表があった.逆にシリコンバレーを代表するインテルは,コスト化をしないと表明した.シリコンバレーでは,ほとんどの企業がオプションを与えており,大幅な人件費圧縮に貢献しているので猛反対なのは間違いない.
注A:詳しくは,1998年8月号を参照.
注B:会計の分野では最先端らしく,ノーベル賞を取った経済学者がいるとか?
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