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ホーム > 記事サポート > 2010年 > 6月号 別冊補足「DC-DCコンバータの入出力電圧/電流と定数の関係」 > 出力電圧が変わると設計がどう変わるか
 

出力電圧が変わると設計がどう変わるか

Vin =9~14V,Vout =3Aはそのままで,Vout を5Vから3.3V,2.5V,1.8V,1.3Vへと下げてみます.これまでは5V固定出力のLM22676-5.0を使ってきましたが,出力電圧を変えるために,ここでは可変出力のLM22676-ADJを使います.このため,出力電圧設定用抵抗のRfb 1Rfb 2が追加されます.また,Vout =5Vのときの推奨設計は,ほかの結果と多少異なっています.
自動生成された回路図を図3に,それぞれの条件下での使用部品を表3に示します.また,コストやサイズ,各種特性の変化を表4図4に示します.

先ほどの場合と同じく,いずれの設計結果もコスト重視(最適化ダイヤルを3に設定)の場合のものです.また,効率や損失などの特性はVin maxにおけるものです.


図3 出力電圧を変えたときの推奨回路
(図をクリックすると別ウィンドウで原寸表示します)


図4 出力電圧を変えたときの実装面積/コスト/効率/損失の変化
(図をクリックすると別ウィンドウで原寸表示します)

表3 出力電圧を変えたときの各コンデンサとインダクタ
項目 出力電圧 単位
1.3V 1.8V 2.5V 3.3V 5V
入力
コンデンサ
Cin 2 10 10 10 10 μF
ESR 0.0055 0.003 0.003 0.003 0.003 Ω
サイズ 18.7 23.4 23.4 23.4 23.4 mm2
コスト 0.03 0.2 0.2 0.2 0.2 $
備考 積セラ 積セラ 積セラ 積セラ 積セラ
出力
コンデンサ
Cout 270 270 470 100 100 μF
ESR 0.02 0.02 0.02 0.035 0.1 Ω
サイズ 77.4 77.4 156 53.3 58.6 mm2
コスト 0.35 0.35 0.38 0.36 0.29 $
備考 固体アルミ 固体アルミ 固体アルミ 固体アルミ タンタル
インダクタ L1 10 10 15 10 15 μH
ESR 0.02 0.02 0.027 0.02 0.027 Ω
サイズ 210 210 210 210 210 mm2
コスト 0.43 0.43 0.43 0.43 0.43 $
備考 ドラム ドラム ドラム ドラム ドラム

表4 出力電圧を変えたときの各特性の変化
項目 入力電圧 単位
1.3V 1.8V 2.5V 3.3V 5V
WEBENCHの設計データ
実装サイズ 516 502 581 478 437 mm2
部品コスト 3.03 3.17 3.2 3.18 3.91 $
効率 η 63 71 76 82 87
トータル損失 Pd 2.27 2.26 2.31 2.23 2.18 W
IC損失 Pd IC 0.62 0.67 0.74 0.81 0.98 W
ダイオード損失 Pd D1 1.44 1.38 1.3 1.21 0.92 W
出力電力 Pout 4.5 5.4 7.5 9.9 15 W
ΔI =0.3Iout としたときのインダクタンス見積もり
デューティ比 DC 13 16.5 21.4 26.8 38.7
最小インダクタンス Lmin 3.6 4.4 5.3 6.2 7.5 μH
特性の見積もり
出力リプル電流 ΔI 0.32 0.39 0.32 0.56 0.45 Ap-p
出力リプル電圧 Vripple 6 8 6 19 45 mVp-p
LC フィルタ共振周波数 f0 3.06 3.06 1.9 5.04 4.11 kHz

出力電圧が低くなると部品がどう変わるか

Vout の変化によって,CinCoutL1が変わります.また,表3では省略していますが,Vout が低くなるとスイッチのOFF時間が長くなり,平均ダイオード電流が増えるため,必要に応じてD1も電流容量が大きいものに変えられています.

● インダクタンスを小さくできる
Vout が低くなると,インダクタ電圧が下がってdI /dt が小さくなるので, L1を小さくできます.表4に示すように,リプル電流ΔI =0.3Iout に抑えるための最小インダクタンスは,Vout が5Vのとき7.5μH,1.3Vのとき3.6μHです.

表3を見ると,Vout が5V,2.5VのときはL1=15μH,また3.3V,1.8V,1.3VのときはL1=10μHで,いずれも余裕をもった値になっています.これらのインダクタは同じシリーズの製品で,サイズ,コストも同じです.

● リプル電圧低減のため出力コンデンサを大きくする必要がある
Vout が下がれば,その分リプル電圧Vripple も小さくしなければなりません.例えば50mVp-pVripple は,Vout =5Vに対してはわずか±0.5%ですが,Vout =1.3Vに対しては約±2%になります.そこで,Vout が低くなるにしたがってCout を大きめに,ESR を小さめに選択しています.
Vout が2.5V以下ではCout は270~470μFと大きくなっていて,Vripple は6~8mVp-pに抑えられています.表4を見ると,その分LC フィルタのf0も低くなっています.

Vout =5VではCout =100μFで,LM22676-5.0の推奨設計(表1Vin =9~14Vのときの値)よりかなり大きくなっています.これはCout が低コストでESR が大きいため,容量を大きく選んでいるためです.固体アルミ電解ならCout =56μFに変えることができます.

● 入力コンデンサは小さくできる
Vin は変わりませんが,Vout が下がるほどスイッチのON時間が短くなるため,Cin を小さくできます.表3を見ると,Vout =1.3VのときだけCin =2μFと小さくなっていて,それ以外はCin =10μFとなっています.

出力コンデンサの大容量化がサイズをわずかにアップさせた

Vout が低くなるにしたがって,Vripple を小さく抑えるためにCout が大きくなります.その分,サイズもやや大きめになる傾向です.しかし,同時にCout の耐圧を下げられるので,コスト的にはそれほど大きな変動はありません.

トータル損失が変わらなくても出力電力の低下によって効率が悪化

Vout が低くなってもトータル損失Pd はあまり変わりません.ところが,出力電力PoutVoutout I が小さくなるため,効率ηは急激に低下してしまいます.効率の値を評価する場合は,この点に注意すべきです.

Vout が低くなるとデューティ比DC が小さくなるため,ダイオード損失が増え,スイッチの定常損失は減っていきます.入力電圧やスイッチング周波数が変わらなければ,スイッチング損失など電源ICのそのほかの損失は変わらないので,LM22676ではダイオード損失の増加と電源IC損失の減少がほぼ相殺されます.

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